年度 | 2009 |
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科目名 | 平和学 |
教員名 | 林 薫 |
授業概要 | この授業は、国際関係論を学問的なベースとしつつ、経済学の知見なども学びつつ「平和」と「開発」の問題を扱います。「平和」とは戦争などの「直接的暴力がない状態」を意味することは言うまでもありません。しかし、今日「平和」の概念は、戦争のような直接的な暴力だけではなく、貧困、不平等、搾取、差別、環境破壊、そのほかの抑圧、恐怖、欠乏などの「構造的暴力がない状態」と理解されるようになって来ています。このため、「平和」と「開発」は多くの論点で課題が重なるようになってきています。この講義では特に平和をもたらす経済的要因に注目します。貧困や経済停滞が紛争の要因になること、資源の偏在や富の不平等が不安定化の要因になっていることがが最近の研究で明らかになっています。開発援助も紛争の防止という観点を重視するようになってきています。この授業では、経済開発や援助と平和の関係について、最近の研究成果を踏まえて、コリアー・ホフラーモデル(Collier-Hoeffler Model) など最先端の理論も学びます。また、エスニシティとナショナリズムの問題も深く掘り下げます。また、平和の担い手としての市民、市民活動、NPOの問題についても考えます。開発と平和について冷静に分析できる能力の獲得を達成目標とします。 |
授業計画 | 平和学が目指すもの 構造的暴力論 人間の安全保障の概念 戦争と平和 国際関係論における基礎的概念と言説 力の均衡・国際協調の生成と発展 国民国家と戦争 ナショナリズムの展開と国家間紛争 冷戦の後の世界と内戦 民族紛争とその理解 エスニシティ- ガバナンス・崩壊国家・ポストコロニアル家産国家 紛争の経済的要因の分析(1) 不平と機会 紛争の経済的要因の分析(2) リスク分析と援助機関の取り組み 平和構築と援助・援助のもたらす問題 開発と人権 コミュニティーのエンパワメント ナショナリズム・エスニック対立のコントロール 他者理解を目ざして 市民と平和・NPOとボランティア 市民性の構築を目指して (以上の授業概要は実際の学期授業回数・回次とは一致しません) |
評価方法 | 授業への積極的参加への度合い(出席を含む)および期末のレポートで評価を行う。紛争要因の分析の基本を理解したかどうか、開発と平和の関係についての基礎知識を習得したかどうかを評価の基準とします。一応の基準は以下の通り:平和と開発に関して必要な知識・見識を習得できた場合AA、見識はまだ努力を有するが知識は習得できた場合A、知識・見識とも多少不足しているが概ね習得できた場合B、一層の努力を要するが今後の発展に期待できる場合C、達成度から見てもう一度履修することが適当と思われる場合D。 |
教科書 | |
参考書 | |
メッセージ | 本授業は若干難しい内容を扱います。特に「開発」に関する専門知識が必要とされます。また、世界の諸課題に関して関心を有していないと授業の目標の達成は難しいです。是非、世界の諸問題への関心を高めてください。「無関心」が暴力を生み出します。 |