19日。茶色の丸々した山を越え、州都サクラメントへ。親戚宅に一泊した。ゴールドラッシュに沸いたサクラメントは、今は行政の中心地として、閑静なたたずまいを見せるこじんまりした街だ。サクラメントもサンノゼ同様、雲一つないポカンとした青空が一日中続いている。北カリフォルニアはこうして、冬の間は延々とシトシト雨が降るが、夏はいつまでも動かない空が何ケ月も続くそうだ。
20日。サクラメントを出てヨセミテ国立公園に向った。ヨセミテの大きすぎる自然に感服。枯れ木の山々を抜けると、巨大な白亜の岩々の断崖絶壁。自然の織り成す芸術だ。さきほどまでの空が嘘のように万年雪に囲まれた山を抜けると、雷が鳴り響き、広大な大地に虹が何本も広がった。水水しい大地の恵みだ。ネバタ州近くのモノ湖で一泊。
21日。395号をひたすら南下しデス・バレーへ。ネバタ州とカリフォルニア州をはさんで広がる「死の峡谷」と名付けられた一帯を横断した。突然に車が減り、ひび割れた道路になる。遠くに黒々とした山脈が広がり、その間を延々と荒地と砂漠、塩岩地帯が広がる。いつまでも続く真直ぐな道。車から一歩出るとまさに灼熱の大地だ。温度計はカ氏120度を差している。らくだが出てきそうな白砂の砂漠で休憩。しかし、一気に走り抜けないと、こんなところで夜がきたら大変だ。もう嫌だというほど走って、デスバレーを抜けても、まだまだ荒原は続く。ああカリフォルニアの海は何処??次第に、ハイウェイが都会を抜けるようになってきた。ロスアンゼルスから東へ80キロ、スペイン風のヒストリカルな建造物の美しい街、リバーサイドまで辿り着いた。
22日。リバーサイドでカリフォルニア・クージンな朝食を取り、一路、サンタアナへ。
91号線でサンタアナ山脈を抜けると、ロスアンゼルスから広がる郊外都市エリアに入る。サンタアナはこの一帯の最東部、ロスアンゼルスのダウンタウンからは50キロほど南東に下った位置にある。地図上では、一号線「パシフィック・コースト・ハイウェイ」上のサーフィンのメッカであるハンティントン・ビーチのやや北、サンディエゴに向うハイウェイ5号線上のディズニーランドのあるアナハイムのやや南だ。
リトルサイゴンの場所について、僕は「サンタアナ」にあるとしか知らなかった。これから探さなくてはならない。地図を片手にハイウェイをふらついた。
日本で、「5号線をロスから下れば、大きくリトルサイゴンって書いてありますからね、簡単ですよ」と聞いていたので91号線をロサンゼルスに向い、アナハイム方面に下ってみたが、そんな看板はどこにもなった(^^);;....それはそうだ、リトルサイゴンは通称で、別に街の名前ではない。だから地図にも「Little Saigon」とは書かれていない。
そこで、サンナアナの北部からロングビーチまでを結ぶ22号線にのり、地図上のサンタアナの中心あたりで、ハイウェイを適当に降りてみた。周辺の大きな道は基本的に碁盤の目状になっている。東西南北、適当に走り回ってみた。時折みかけるのはハングル文字。ベトナム語は見当たらない。いったいどこなんだ、リトルサイゴンは??以前、クパチーノで、広告に住所の載っていないアップル本社を無理矢理さがし出したことがある。アップルマークのトラックに付いていったら郵便局に辿り着いたり、迷いに迷ったがなんとかたどり着けた。どうにかなるだろう.....ベトナム人らしきドライバーを見つけて着いていってみたりしたが、周囲の住宅街にまぎれて分らなくなってしまった。今どこを走っているのかさえ、しだいに分らなくなる僕であった。
ふらふらサンタアナを走っているあいだに、カーステレオのスイッチを入れた。たぶんベトナム語の放送があるに違いない。チューナーをスキャンし放送に耳を。都市エリアに入るとFM1からFM2まで、チャンネルの数も増えてくる。カントリー・チャンネルから、ロック・チャンネル、スムーズ・ジャズ・チャンネルまで音楽ごとに別れた放送が楽しい。スペイン語のチャンネルがあった。ベトナム語はないか.....数回ループしてスキャンすると、早口で数字を読み上げるコマーシャルが。おお、ベトナム語だ!
「FM2:106.3Mhz」はロサンゼルス近郊で聞くことができるベトナム語の放送だ。時間帯ごとに放送内容が代わり、午前中は日本語放送がある。午後から深夜まではベトナム語放送で、サンノゼのラジオ局製作の番組と、南カリフォルニアのラジオ局が製作した番組が途中で交代するようだ( ) ......Radio Bolsaのホームページはこちら.....未完だけど.....。以前サンノゼではAM放送を聞いたが、ここではFMでステレオということもあり、V-POP番組を期待したのだが、残念ながら音楽放送の少ないこと、少ないこと。歌手が登場してコメントを述べたり、コンサート告知のコマーシャルはあったが、お話と広告中心の番組構成で、ほとんど音楽はかからなかった。
ラジオ・ボルサのホームページ。
ラジオのコマーシャルを聞いていると、ウェストミンスター云々、ボルサ云々という住所が聞こえてきた。そうだ、このストリートを目指せば何かリトルサイゴンの情報があるに違いない!ライオンプラザで買ったカセットを取り出した。Hoang Lan所属のプロダクションのTuy Nga Pro.もウェストミンスター市ボルサ・アヴェニューにある。地図でボルサ・アベニューを探すと、サンタアナ中心を東西に横切るっている。しばし南下すると信号機にボルサと書かれている。右か左か分らないがとりあえず曲がってみた。
ボルサ・アベニューは片側3車線以上ある大きな道路だ.....この周囲の目立った道路は皆こうだが......。しばし進んだところで、どこという区切りなく、ベトナム・コミュニティーの雰囲気が現れてきた。ほうほう、あるある、とゆっくりアクセルを踏む。コミュニティー入り口近くにはよくある教会が目についた。きっと、もう近いはずだ。
しばし大きな交差点を渡ること数回。なんのアナウンスもないなか、はっと気付くと、街道沿い一帯は四方八方全てベトナム語に囲まれていた。周囲を走る車の中には黒髪の人ばかり。
これがリトルサイゴンか!
リトルサイゴンの近辺のおおざっぱな地図です。
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