アリーナ・コンサート後半部その二 |
原色の派手なスーツ姿でダンサーと共に登場したのはTommy Ngo。ノリノリの歌謡曲で踊る彼の姿は、どこからみても西城秀樹だ(^^);;。引き立てるダンサーはバドワイザーの広告を見ているかのよう。Tommy Ngoは、口パクのサックスを片手にステージ狭しと走り回る。これは、なんだかとっても懐かしい。
1975年、子供の頃に家族とともにアメリカに渡り、アマチュアドラマーから歌手へ。ロックンロールとイギリスポップスが大好きとう彼はLynda Trang Dai と夫婦でもある。
Tommy Ngo、オンステージ。Vietscape提供
時間もそろそろ終盤に近い。
司会に紹介されて登場したのは緑の上着と白のパンツのアオザイをまとったNhu Quynhだ。待ってました〜〜、はつかのま。Nhu Quynhはちょっと悲し気な顔でMCをしている。なにか謝っているようだ。ときおり咽に手を当てて.....勝手な想像では.....体調が悪い/医者にもとめられている....って聞こえるけど、やっぱり分らない、なんだなんだ??美しい瞳に、あれは涙??MCの途中から演奏が始まった。今回のソロは本物だ。
すごい。
言葉を失ってしまう。豊かな倍音に僕の脳は溶けてしまいそう。
が、なんとワンコーラスで曲は終了。Nhu Quynhはおじぎをしてステージ脇にもどってしまった。おおお、なぜ〜〜。
Nhu Quynh、オンステージ。Vietscape提供
Vu Khanhは再び渋めのミドルテンポ歌謡曲を歌う。僕はさすがにそろそろ頭がパンクしそうな状態だ。コンサートは既に4時間半を超えているのだ。ボトルの水ももう尽きている。アリーナ席だから、簡単に一服というわけにはいかない。
なめらかな声で歌は続く。途中、曲間で「今宵、故郷ベトナムは云々.....」とVu Khanhが言葉を挟むと、演奏がブレイクし、「ア〜アア〜〜アア〜〜〜」とテナーの叫びが会場に響くいた。すると観客席は「O^i!」と大合唱!12000人の声が会場全体に響き渡る。このかけあいが10回が続いただろうか。これまでこんな反応はなかった。、「ア〜アア〜〜アア〜〜〜」「O^i!」背中から風が起きるかのような大声援なのだ。
僕 はちょっと寂しくなった。これまで音楽を媒介に、分り、通じあえ、共有できるものを聞いて見てきた。言葉が分らなくても音楽は言葉だったし、環境が違っても音楽空間はひとつだった。V-POPとは、とかの前置きを忘れてメロディーとあこがれの人を楽しんできたのだった。しかし、僕には、この「O^i!」にこめられた気持が全く分らないのだ。Vu Khanhの話すシンパシーは、頭ではよく分かっていても、それは「O^i!」という声には、そして、感情には........ならないのだ。
あこがれのアイドルをみてうれしいと話す人もどこにもいない。周囲の一体感で、ますます僕 は一人になってしまうような気がする。自分は、いったい、どこに、いるのだろう??
Vu Khanh、オンステージ。Vietscape提供
オオトリはManh DinhとNhu Quynhの楽しい歌劇。二人のバラッド・デュエットはたくさんあるが、今回はおしゃべり&歌で楽しいエンディングだ。二人ともアオザイに帽子姿。内容はごくささいなもので、Manh DinhがNhu Quynhに振られるというものだ(^^);;。Mahn Dinhは「じゃあ、観客席に聞いてみよう」と耳をすますと、あっちこっちでブーイング!右も左も「だめだめ」コールだ。仕方ないので、バンドのドラマーに聞いてみるとOKサインが。一瞬仲むつまじくなる二人だが、やっぱりNhu Quynhはプンプン怒って帰ってしまうのであった。笑えた。
Manh Dinh & Nhu Quynh、オンステージ。Vietscape提供
マーチのテーマが流れると、出演歌手が一同にステージへ。クラッカーが飛び、リボンが乱れて、アリーナ席は開放された。脇のステージ席からまん中に人が集まってくる。記念撮影をする人たちや、フィナーレの音楽で席を立つ人たち。
5時間にわたる夏のお祭りが幕を閉じた。
観客席の様子。Vietscape提供.....左手に青い服を着ているのは誰??
【アリーナその後】
アリーナを出ると、ダウンタウンに向う道路は車で帰宅する人たちで大渋滞だ。バスを待つ人はもういない。
相変わらずアリーナのロビーのガラスからは照明が洩れて周囲を明るく照らし出している。すでに電光掲示板は明日以降のイベント情報が流れていた。
昨年ワシントンDCに行ったとき、トランジットでサンノゼで停泊したのだが、その時に夜チラリとアリーナを見た。その時の気持を思い出した。もうさっきのコンサートの感動が懐かしくさえ感じていた。
なんだかお腹が空いてきた。カフェでビールを一杯。空腹に心地よい酔いの回り。
残念ながら、コンサート後にはT氏にも、H氏にも会えなかった。一言お礼をいいたった。それが僕の感動の分かち合いの手段だったが。
ホテルに戻る。フロントでカギをもらうと、横にいたのはLinda Trang Dai!! キャー!おんなじエレベーターにのっちゃった〜〜。。実はT氏から歌手の泊まるホテルを聞いていたので、無理していいホテルに一泊だけしていたのだった(....ちょっとうれし!...)
明日からレンタカー借りて南下だ。
--第七話--
アリーナ・コンサート後半部その二
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