「Paris By Night」開幕 |
入り口玄関でカメラ・チェックに引っ掛かってしまった。鞄に使い捨てカメラを何の気なしに入れっぱなしだった。「使わない/預かってくれ」は通らず、「車へ戻って置いてくるように」。その間にT&M氏はロビーへ。チケットをもらっておいて、いなくなってしまってしまうような不義理はできない。だが「友だちに一言、言いたい」も「だめ」の一点張り.....警備のキツさを実感した。こんな警備の違いからも、平和&著作権ボケした自分を感じる。
開場6時、開演7時の予定であったが、約30分押し。この間30分はロビーで待つことになり、ホールはまだ閉め切られていた。
「Paris By Night」とは、アメリカ/フランス/オーストラリアに拠点を持つ「Tuy Nga Production」の製作する音楽ソフトの一つだ。ビデオでの販売を中心としており、その内容は音楽バラエティーショーである。いってみれば昔あった「夜のヒットスタジオ」の豪華版といったところだ。たいていの作品はスタジオで少数の招待客とともに作られた向きがある。多数のオーディエンスとのインターラクションを見せるライブ版の趣とはやや異なるものが多い。
この「Paris By Night」シリーズ15周年記念を銘打った今回のショーも同様にビデオ化されることが前提のはずであり、準備に念をいれての押しとなったのだろう。 それにしてもロビーをうめ尽くして、さらに入場を待つ人の列は、フェスティバルと呼べるそうな勢いだ。これまでの作品とはずいぶんイメージが異なるように思う。果たしてどんなショーが始まるのだろう。
ロビーでは両面刷り三つ折りフルカラーのパンフレットが配られていた。リストされる出演者は先週・先日のショーにも増して人数が多い。
MCはアリーナ・コンサートと同様にNgyen Ngoc NganとNguyen Cao Ky Duyenの二人。パフォーマーには、Khanh Ly, Y Lan, Hoang Lan, Thien Kim, Lynda Trang Dai, Phuong Vy, Chau Ngoc, Ai Van, Luu Bich, Bao Ngoc, Truc Lam, Truc Linh, My Huyen, Nhu Quynh, Thai Hien, Thai Thao, Bao Han, Tuan Ngoc, Duy Quang, Elvis Phuong, Don Ho, Ngyen Hung, The Son, Tommy Ngo, Hoai Nam, Trang Thanh Lan, Hong Dao & Quang Minhの24組みが名を列ねている。バンドは12人。名前を見る限りバンドのメンバーに日系が一人含まれている以外は、すべてベトナム系だ。
一方、21人のダンサーと6人の子供などの出演者にベトナム系の名前はほとんど見られず様々だ。ステージクルーはベトナム系とそれ以外が約半数ずつ。こうしたクレジットから、対象も主役も主にベトナム系のショーであっても、製作等には人の多様さが見られ、その総過程はベトナム系に閉じられてはいないものであることが分る。
T&M氏とベトナム旅行の話をしながらホール開場を待った。英語で話しながらも、土地名だけはベトナム発音で話す僕に振り向く人がいる。さっき「Ticket Want」の紙に「無理だよって顔」をしていた人と再会し、ちょっと御機嫌になったり。
ホールが開場された。音響のよさそうなモダンなホールだ。中は、東京国際フォーラムの一番大きなホールとよく似ている。違うのは3階席まであること。僕の席はこの3階席。最左手の最後列だ。要するに一番遠い一番後ろだ。でも見れるだけいい。すぐ横は壁だし、のんびりと見れそうだ。
ステージは幕が降りていて中は見えない。左手に司会用の壇があり、ステージ右手には巨大スクリーン。
押しのせいもあって、会場はあっという間に満席になった。ビデオ撮影にはもってこいの演出である。
待つことさらに30分。時計が9時を差すころ、ゆったりと照明が落ちた。
ドレス姿のDuyenが壇上にゆっくりと歩む。今日のイベントの若干の紹介の後、やはり司会のNganを紹介。するとステージ右手からノソノソと這い出てくるモノがある。なんだなんだ、と見ていると次第に姿を表したのは...........フタコブ・ラクダであった>オイオイ。Nganはタキシード姿でチョコンとラクダの背に乗り、ゆったりゆったりとステージにやってくる。いきなりドギモを抜かれたオープニング(^^);;。大それたことをやるもんだ。
そこで、入場のテーマが流れ、ダンサーが踊り出す。Little Peopleとパンフに書かれた小さな男性3人がラクダをひき、ラクダはステージ中央で足を折り曲げてNganを降ろした。
う〜ん、このよくわからない派手さ!僕はこのV-POP感覚が好きだ。
しばしLittle PeopleとともにDuyen&NganのMCが続き、15周年記念の挨拶、数人のゲストの挨拶と続く。
Tuy Ngaの奥さんの短いが謝意のこもった挨拶もあった。
後に聞いた話であるが、このショーは総額7000万円以上をかけた、V-POPでもこれまでにないビッグイベントであったそうだ。Tuy Ngaの奥さんは連れなしに一人で登場したのだが、15年かけてここまで大きくなったイベントを前に感無量といった感じであろうか。僕はこのプロダクションについて、これまでの歴史をよく知らないのだが、奥さんに向けられた暖かい拍手を聞いて、ちょっと調べてきたくなった。
異った国で背景は異なりながらも、一つの枠組みを持ちながら生活する仲間のためにという目的を持って、娯楽提供を行いながら商業的に成功するためには、どれだけさまざまな苦労拮抗があったことだろう。
MCが歌手を紹介すると幕が上がった。歌手は一人ずつ登場し、その度ごとに幕が閉まり、一幕一幕が劇空間を作り出していた。各ステージには巨大な大道具がしかけられており、ほぼ全幕で異なるセッティングが用いられていた。そのため間隔のMCは長かったが、司会の絶妙な進行は、真面目あり、笑いありで飽きさせないようであった。そして一幕あがるごとのステージには、観客からため息がもれるほどハっとさせられる仕掛けがなされていた。幻想的なライティングが全編に貫かれるロマンチシズムを象徴していた。演出を前面に出したもので録音済みのものが流されるもの、バンドの生演奏とともに聞かせるステージングのもの、歌は生でも演奏はオケであるものなど、ステージの内容によって出演スタイルは異なっていた。ほぼ全編が歌を中心としてステージだが、コントとファッションショーが一つずつあった。こうして24人の歌手が登場し終ったのは午前1時40分で、4時間半以上休憩なしで続いたのであった。
この模様は近日発売の「Paris By Night 45」で発売される予定なので是非、御一聴を。これまでにない豪華で見ごたえのある作品に仕上がっているに違いない。
--第十七話--
「Paris By Night」開幕
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