夜10時にリトル・サイゴンでベトナム料理の夕食を。
周辺のモールはすでに全て閉店していて、レストランの明かりだけが目立つ。道路に隣接するのは、まず駐車スペースで、建物はみなさらにその奥にある。リトル・サイゴンでは駐車スペースにことかかない。
ファミリーレストランのような店内は広く、中華料理のように材料ごとにならんだメニューも多いこと。100種類ぐらいあるのではと思わせるほどだ。さんざ悩んだすえに頼んだら、ウェイターのおじさんは「Not Go〜od」と首を振っている。オイオイ.....not goodなら書かないでくれよ....
お勧めを聞くと、おじさんは「ライスを食べたいのかい?」
そうなのだ、ライスが食べたいのだ。短い旅とはいえ、巨大なオムレツとポテトにパンか、ハンバーガーばかり食べていたから、ライスが恋しくなる。おかずの付け合わせがポテトチップスだった時なんて泣きたくなってしまう(^^);;。ベトナム料理はこの点で僕にはうれしい。やっぱり夜はライスを食べないと食べた気がしない。「御飯を食べる」と「アン・コム」の共通点、う〜ん、おじさん、分かってるね!
お勧めは牛肉の甘辛炒めだった。見た目も牛肉の味付けも普通だ。しかし付け合わせのキャベツとトマトにはニョクマムとハーブの香辛料がひたっている。このキャベツに牛肉を巻いて食べると、あのベトナム料理になるのだ。少し暖かくなったキャベツのさわやかが口に広がり、ハーブが鼻の頭にふわりと香る........。もう一度、ニョックマムへ浸してもう一口。トマトのひややかさの後に、熱々の牛肉の脂身が口のなかではじけ、ふわりと広がるニョックマムの香りが再び野菜で和らげられる!
最高だ。ライスはフライドライスだったが、お腹いっぱい。これで7ドル50セントは安い。
リトル・サイゴンで英語を話すと、突然顔がきつくなることがしばしばあった。でもこのお店は、最後もサンキューで明るい笑顔。言葉は分け合えなくても、米の御飯が食たくなってしまった気持なら分け合えるような....そんな気がする。
7/23(木)。
パシフィック・コースト・ハイウェイを南下。途中、坂と美術の街ラグナ・ビーチで朝食。5号線でサンディエゴへ向う。山の中のカリフォルニア大学サンディエゴ校の美しい教会を越え、カリフォルニア・ブルーの海と空の港町に到着。サンディエゴ半日観光。
そのまま5号線をさらに南下。インターチャンジにメキシコの文字が。地上で初国境越えの僕だが、通り過ぎるだけのあまりにあっけない国境越えだった。チファナの街だ。この街はあまりにアメリカと違っていて驚いた。たった一本の線引きが、これだけ生活に違いを生むなんて。
夜半にサンタアナのモーテルに到着。今日もよく走った。
7/24(金)。
ハイウッドとビバリーヒルズの午前。サンタモニカの午後。サンノゼ以来、走り歩き探し続けの疲れがとれた。
マジェスティック・クラブの開場は9時から。
マジェスティック・クラブの住所はBeach & Ellisとしか書かれていない。カリフォルニアのおおざっぱなロードマップにも、どちらのストリートも載っているから、分りやすそうだが、交差点にあるということだろうか?
リトル・サイゴンの西側をハンティントン・ビーチまで垂直に通じる39号線ビーチ・ストリートを南下する。リトル・サイゴンから約4マイルあたりでエリス・ストリートと交差する。交差点を少し越えてビーチ・ストリート沿い左手のモールにマジェスティック・クラブと書かれた看板が見えた。
幸いすぐそばにモーテルがあったので宿をとり歩いて会場に向った。開場40分前で、まだ誰もいない。向いにマクドナルドがあったので軽く夕食をとり、クラブ前で待つこと20分。コンサート前のこの「待ち」時間が適度な緊張を生む。
マジェスティック・クラブは白と黒を基調としたお洒落な建物だ。ガードマンが立つ玄関のガラスの奥にV-POPのコンサートのポスターが見える。ポツリポツリと客足が増してくる。そろそろ9時をまわる頃だ。
最初に入っていったのは年齢層のやや高めの女性たちだった。皆が皆、黒のドレスに化粧でビシッッ!と決まっている。結婚式のパーティーのように、盛装の人ばかりだ。ややカジュアルな僕は浮かないだろうか、ネクタイなしで断わられてはたまらない......心配だ。
チケットを入り口で見せると、案の定、止められた。「IDを見せろ」。童顔僕はクラブに入ったり、煙草を買ったりすると必ずIDを提示させられる。クールなIDがあれば見せたいところだが、あいにく日本のパスポートしか持ち合わせていない。お洒落な空間を前にパスポートを取り出すと、なんとなく気がそがれる。相手の反応ももう読めている.....漢字いっぱいのパスポートに目が丸くなるボディーガード......「誕生日はどれだい?」
やや暗い玄関ホールに今日のイベントのポスターが貼ってある。他も貼られたポスターはV-POPものばかりだ。顔の見えないカウンターにチケットを渡すと、無言で入場券が奧から投げるように一枚渡された。鞄に金属チェックがあてられる。なかなか厳重な警備だ。
期待を胸に真っ暗なクラブ・スペースに足を踏み入れた。..........広い!
中も黒貴重の色合いで、照明はセンターで回るミラーボールとステージの薄明かりと間接照明だけの高級感あふれるお洒落な空間だ。
入ってすぐ右手にはバーカウンターがある。その前に赤い4人席のボックスシートが並んでいる。そして4人掛けの丸テーブルが10列ほど左右にびっしりと並んでいる。白のテーブルクロスがかかっていてレストランのようでもある。さらに奧中央は広めのディスコ・スペースになっている。照明はステージだけでなく、このディスコスペースにもぎっしりだ。ディスコ・スペースをコの字型に囲うように、さらに丸テーブルが置かれ、壁沿いには赤い二人がけぐらいのボックスシートが並んでいる。観客収容数は500は超すだろうか。
入り口からして東京のブルーノートのようなライブハウスを想像していたから、ちょっと驚いた。客席数だけではなく、踊るスペースと着席するスペースがくっきりと別れているというのも面白い。
ステージはその奧にあり、少しフロアから上がっていて、高い位置にはない。奧ゆきよりも、幅のあるステージで、見やすそうなステージだ。左手にドラムスとパーカッション、ややセンターよりにキーボードが3台と、右手はギターとベース、サックスというセッティングだ。十分、生演奏が楽しめそうだ。ステージにマジェスティックの文字が光る。ステージの両脇にもスポットでマジェスティックの文字で雰囲気がある。
まだ20人くらいしか客は入っていない。ステージ近くの席では、出演者が時々挨拶にきている。客席は自由席だが、それぞれの座席スペースのステージ最寄り席には、三角に織った紙に名前が書かれているので、予約しているグループもあるようだ。どこに座ろうか迷った。どこも4人席の丸席で一人席に向かないし、中央はディスコ・スペースだから、音を選べば遠くなり見るを選べば耳が痛そうだ。ガードマン以外、注文や案内等はベトナム語で行われていた。取り敢えず一周しつつ、迷っていると案内の女性が「一人なら、ここかなあ」と席を案内してくれた。ディスコ・スペース右手手前。近すぎず、遠すぎず、落ち着いて見れそうだ。
スタッフが着席した席から今日のコンサートのパンフや今後のコンサートのパンフを配っている。なんと8月14日にはニュー・クイン・ショーがあるのだという。ううう、み・た・い.....。
9時を30分ほど過ぎた。客足はまだ3割程度といったところだが、演奏陣が登場した。サウンド&チューニングチェックをチョイとすませると、すのままのノリでミドルテンポのジャズが始まった。お、なかなかカッコイイし上手い。スイングがいい。まだ客足は鈍いが、演奏はサンバリズムになって次第に盛り上がってきた。演奏がスッパっと切れると、どこからともなくマイクのアナウンスが。
「歌手はTu Quyen !!」
え!? プログラムに載っていたっけ??
青のビキニに短パン姿で登場したTu Quyen がミドルテンポのバラッドを軽く歌うと、パチパチとバラけた拍手が。まだまだ客足は少ない。予約席の数をみれば、そのうち埋まるに違いないが、これだけのシート....大丈夫なのだろうか。
さらに、しっとりとしたバラッドを一曲。演奏はいいのだが、歌のリバーブはちょっといただけない。お風呂リバーブがバリバリにかかっているのだ。これではせっかくのTu Quyenのしっとりハスキーな声のよさが消えて、カラオケノリになってしまう。たとえ満席になっても、このリバーブを吸収するとは思えない。
が、次の曲が始まり、僕はこのリバーブの意味が分かったのだった。
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