刀水書房から発売されている
「白人とは何か？」のご紹介です。
定価（本体2300円+税）
編 者：藤川隆男
出版社：刀水書房 「刀水歴書全書 73」
出版年：2005年
（ISBN4-88708-346-7）
2005年10月に発刊されたこの本は、大阪大学の藤川隆男先生が編集した書籍です。本の内容は、国立民族学博物館で開催された研究プロジェクト「世界における白人の構造化」の成果を編纂したものです。
日吉は、同プロジェクトにおいて、アメリカのメディアと「白人」表象をテーマに、研究発表をさせていただきました。本書では、第4部第17章の「映像文化と白人性 ～テレビのなかの民族とイメージ～」を執筆しています。
プロジェクトの代表者で、研究会にお誘いをいいただき、編集者として多大なご指導をいただいた藤川隆男先生には、心より感謝申し上げたいと存じます。
2005年 日吉昭彦
もくじ
1 白人研究に向かって ～イントロダクション～：藤川隆男
第一部 白人研究の「見取り図」
2 白人性の探究 ～白鯨を追って～ ：藤川隆男
3 白人性と世界構造 ～二つの白人性～ ：藤川隆男
4 白人性と表象／ジェンダー ～先人の遺産～ ：藤川隆男
5 白人労働者階級の形成 ～下からの歴史～ ：藤川隆男
第二部 白人の形成
6 白色人種論とアラブ人
～フランス植民地主義のまなざし～ ：杉本淑彦
7 ヒムラーのアーリア人種観とその帰結 ～親衛隊による「血の選別」～ ：原田一美
8 アメリカにおける白人の形成 ～先住民・アフリカ人・移民の交錯～ ：山田史郎
9 オーストラリアにおける「白人」の創造と大英帝国 ～1870年代から1901年までを中心に～ ：村上雄一
10 もう一つの北米社会 ～20世紀初頭のカナダにおけるホワイトネスとブリティッシュネス～ ：細川道久
11 「白」と「茶色」の間 ～南アフリカにおける白人形成～：永原陽子
第三部 白人の投影
12 歴史としての白人像 ～オーストラリア先住民のオーラル・トラディション～：松山利夫
13 「ドミナントな白人性」を超えて ～近代日本の二つの顔～ ：酒井一臣
14 白人とネイティブのカテゴリーをめぐって ～ドイツ統治下のサモア～ ：山本間鳥
15 宣教師たちの諸相 ～キリスト教布教の現場にみる白人性～ ：並河葉子
16 野蛮なヨーロッパ ～近代歴史認識における十字軍像の変容～ ：上山益己
第四部 白人性の展開
17 映像文化と白人性 ～テレビのなかの民族とイメージ～ ：日吉昭彦
18 多文化主義のなかの白人性 ～オーストラリアの多文化主義論争から～ ：関根政美
19 家族計画援助と白人性 ～強制された近代家族～ ：荻野美穂
20 死者たちの白人性 ～オーストラリアにおける戦争の記憶と「国民」の境界～ ：津田博司
21 「白人であってそうでない」者たち ～イギリスのインド支配と白人性の境界～ ：水谷智
おわりに ：藤川隆男
◆ 掲載の一部 ◆
※本書の、日吉担当分の第17章のもくじを掲載しています。ご関心を持っていただけた方は、是非、本書をご購入ください。
映像文化と白人性
～テレビのなかの民族とイメージ～
定価（本体2300円+税）
編 者：藤川隆男
出版社：刀水書房 「刀水歴書全書 73」
出版年：2005年
（ISBN4-88708-346-7）
日吉は、同プロジェクトにおいて、アメリカのメディアと「白人」表象をテーマに、研究発表をさせていただきました。本書では、第4部第17章の「映像文化と白人性 ～テレビのなかの民族とイメージ～」を執筆しています。
プロジェクトの代表者で、研究会にお誘いをいいただき、編集者として多大なご指導をいただいた藤川隆男先生には、心より感謝申し上げたいと存じます。
2005年 日吉昭彦
映像文化と白人性
～テレビのなかの民族とイメージ～
日吉 昭彦
観光広告のなかの白人性草原で車座になり、大地に額をつけて祈りを捧げる、さまざまな民族衣装の人びと。輪になった人びとの映像は、ラフレシアの花に変わる。竹笛や打楽器の民族楽器が奏でるメロディーに合わせて、自然の動物の生態や、各地の民族舞踊が披露される。カットアップされる白人の夫婦の踊り、土産ものをカメラに向ける白人観光客、そして高層ビル群・・・・これは、2004年冬にCNNで放映されたインドネシア政府の観光広告である。映像の最後に「Ultimate in Diversity（究極の多様性）」のキャッチコピーが重なる。
近年、ケーブルテレビやスカイパーフェクTVの普及、放送のデジタル化などで、多チャンネル化が進むなか、家庭でも海外のニュース専門チャンネルを気軽に視聴できるような環境が実現するようになった。地上波テレビではあまり放映されていない世界各地の観光コマーシャルに触れた方も少なくないのではなかろうか。
この広告のなかで、はっきりとカメラに目線を合わせ、一個人として描写されるのは、白人の観光客のみである。インドネシアの人びとは、カメラの被写体であるか、集団で描写されているのみで、ラフレシアが象徴するように統合する民族によって描写されている。この広告は、白人のまなざしで、自らの文化を描き出しているのではないか、と考えさせられる。ある意味で、セルフ・オリエンタリズムである。CNNのようにグローバルな展開をみせるメディアで流される広告は、ターゲットになる視聴者もまたグローバルな対象が想定されているにちがいない。しかし、上記の広告の例では、その記号として白人の観光客が表象されているようだ。
2001年にユネスコで「文化多様性に関する世界宣言」が採択されて以来、メディア・イメージの世界でも積極的に「多様性」という言葉が用いられるようになっている。一方、こうした言葉の広まりの背景には、国境を越える情報流入の不均衡をどのように是正し、ローカルな文化の特性にどのように配慮するか、という1960年代から続く情報秩序に関する議論があった。いわばグローバル化と拮抗するローカルの論理である。インドネシアの広告では、そのローカルの論理が、グローバル・メディアの代表格のCNNで、しかも白人のまなざしで表象されている。ここには、白人性を内面化した視聴者から、理解され得ることを望むような、姿勢が貫かれているとえいないだろうか。
メディアと白人・白人性研究
近年、メディアや映像表現の領域で白人・白人性を検証する研究が進んできている。特に、映画や映像芸術の批評的なアプローチによる白人・白人性研究は、これまで盛んに行われてきた。一方、大衆文化としてのマス・メディアを取り上げる研究はまだ少ない。批評的なアプローチで文化研究を行うカルチュラル・スタディーズの成果が散見・・・・・
→ 続きにご関心がある方は、是非、本書をご購入ください。
Get In Touch.
よろしければお気軽にメッセージをお寄せくだされば幸いです。
Error
Your message was sent, thank you!