NTT出版から発売されている
「コミュニケーション学入門 ～進路とキャリア設計のために」のご紹介です
定価（本体2000円+税）
編 者：田村紀雄
出版社：NTT出版
出版年：2003年
（ISBN978-4757101005）
2003年5月10日（土）に発刊されたこの本は、東京経済大学コミュニケーション学部教授の田村紀雄先生の編集で出版されました。この本は「コミュニケーションと職業・仕事をテーマにして、わが国で初めて編まれたマニュアル（田村）」です。
「コミュニケーター」とはどのような人を指すのでしょう。コミュニケーション・メディアの発展とともに、たくさんの仕事やチャンスが生まれてきました。果たしてそれはどのような分野においてでしょうか。どのような仕事や職業があるのでしょうか。そこにはどのような仕組みやプロセスがあるのでしょうか。さらにこうした仕事に就くためには、どのようなことを知ればよいのでしょうか。この本はさまざまな分野から、こうしたテーマについてアプローチしている入門書です。
日吉は、この本の第8章「日本に着床したエスニック・メディア」という部分を執筆しています。「エスニック・メディア」と呼ばれる、日本で発行されている外国語のメディアについて論考したものです。国際化という日本社会の動きを、いち早くメディア・ビジネスにしていった「エスニック・メディア」を発行する在日外国人の人たち。日吉は、こうしたメディアやメディアを作り出す人たちを長らく取材し、そして、日本社会の変化を的確にとらえ、ビジネス・チャンスにしていった先見的な目や熱い思いに触れ、在日外国人であるからこそ知ることができるさまざまな日本社会の問題や、こうしたメディアでこそ知ることができる多様な世界の文化に触れてきました。「エスニック・メディア」を知ることで、現代を生き抜く知恵と知識、そしてその現状と一旦を感じていただければ幸いです。
さまざまな領域の専門家が論じるコミュニケーション論。さまざまに「コミュニケーション」に関心を持つ人たちとともに。
2003年 日吉昭彦
もくじ
はじめに ～コミュニケーションを学び、仕事とポストを得る：田村紀雄
第1部 コミュニケーション産業の成長性
第1章 出版：川井良介
第2章 新聞社：田中薫
第3章 新聞産業、経営と企業の特徴：長広美
第4章 放送：向後英紀
第2部 地域に芽生える新事業、経営チャンス
第5章 天井の見えないCATVの拡大チャンス：牛山佳菜代
第6章 地域に根付くコミュニティ放送の可能性：染谷薫
第7章 映像（写真・映画・テレビジョン）のアントプレナー：河原
啓子
第8章 日本に着床したエスニック・メディア：日吉昭彦
第9章 共感のまちづくり：山本英政
第3部 コミュニケーション、もっと深く学ぶ
第10章 ジャーナリズムとは何か：水野剛也
第11章 越僑する知識：森一道
第12章 人と地域を支援するコミュニケーション：櫻井猛
第13章 現代社会のシンボル：森田登代子
第14章 現代社会が求めるジャーナリストの資質：飯塚浩一
第15章 イベントは都市のビジネス：井川光雄
第16章 コミュニケーターの養成と質の確保：田村紀雄
おわりに：田村紀雄
◆ 掲載の一部 ◆
※本文は、日吉担当分の第8章の冒頭部分の一部を掲載したものです。ご関心を持っていただけた方は、是非、本書をご購入ください。
日本に着床したエスニック・メディア
定価（本体2000円+税）
編 者：田村紀雄
出版社：NTT出版
出版年：2003年
（ISBN978-4757101005）
日本に着床したエスニック・メディア
日吉 昭彦
1. はじめに 日韓共催で開催されたワールドカップ・サッカーに湧いた2002年の夏。テレビに映し出される、世界から集まった強豪たちの夢の競演だけでなく、日本各地で応援するサポーターたちも、大いに注目を集めた。そのなかで、群馬県大泉町という地方の小さな町が、時々紹介されていたのを覚えているだろうか。この町のサポーターたちが、熱心に声援を送るのはブラジルだ。開催地でもなければ、キャンプが張られたわけでもない地域であるが、これほどまでにブラジルに肩入れする人が多いはなぜだろう。実は大泉町には、人口の1割を越える日系のブラジル人たちが住んでいるのだ。法務省入国管理局の統計によると、現在、日本には170万人を越える在日外国人が生活をしている。これは日本の総人口に占める割合で1.7％にのぼり、在日外国人の人口は毎年、増加傾向にある。これは私たちの身近に、同じ市民として、さまざまな文化的な背景を持つ人々が生活をしているということである。日本はその内においても国際化が進行しているのだ。
日本の入国管理法の改正で、1990年から日本の国籍を持たない日系2世や3世の人たちに、就労制限のないビザが発給されるようになった。バブル景気で人材不足に悩む地方の工業都市は、こうした日系人をリクルートしていった。大泉町もその一つで、富士重工業や三洋電機などの大企業の工場が立ち並ぶ工業都市だが、町をあげて体制を整え、多数の日系ブラジル人たちを受け入れていった。ある意味では人の移動の規制緩和となったこの変化から、大泉町は国際化の最先端のモデル的な地域となった。こうして日本の内にもブラジル・タウンと呼べるような町が形成されていったのである。
ワールドカップの決勝戦でブラジルの優勝が決まった日、大泉町にあるブラジル雑貨を扱うスーパーマーケット「ブラジル・プラザ」周辺には、1000人以上ものサポーターが集まっていた。日本人の姿もあるが、多くは日系ブラジル人たちだ。店を開放して据えられた巨大スクリーンに流れているのは、NHKの放送ではない。日系ブラジル人をはじめ、在日の南米人を対象に、スカイパーフェクTVを通じてポルトガル語の放送を行っている「IPC World」社の「IPCブラジルチャンネル」である。
在日外国人が増加すれば、日本にいながらにして母国語による情報を得たいというニーズが高まってくる。母国のニュースや日本の出来事、生活情報から娯楽にいたるまで、情報は異国での生活に欠かせないものである。「PC World」社はこうした時代のニーズをとらえて成功したメディア企業だ。南米出身の在日外国人を対象にして、ポルトガル語とスペイン語の新聞を発行し、スカイパーフェクTVにも3つのチャンネルを持って放送事業を行っている。 このように、日本で生活する在日外国人のために制作されている外国語のメディアのことを「エスニック・メディア」という。ふだんはあまり目につかないメディアかもしれない。しかし、近年の日本の内なる国際化という大きな社会の変化を背景に、さまざまな言語のメディアが根付いてきているのである。
2. 「エスニック・メディア」とは何か
「エスニック・メディア」の一つの特徴は、ある社会で言語的にマイノリティの立場に置かれた人々が、母国の言語を用いて制作しているという点にある・・・・・・・・・・
→ 続きにご関心がある方は、是非、本書をご購入ください。
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