・ほとんどの対象者は携帯電話を所持
・通話/電子メール機能の両者ともに、友人と接する場合と両親と接する場合を比較する
と、両親と携帯電話で接する頻度は少ない。
・通話/電子メール機能の両者ともに、父親と母親を比べると、父親と携帯電話で接する
頻度がやや少ない。
・友人との利用頻度に関しては、「通話機能」より「電子メール機能」利用のほうが高い
・両親との利用頻度に関しては、「電子メール機能」より「通話機能」利用のほうが高い
よろしければお気軽にメッセージをお寄せくだされば幸いです。
・両親の「コミュニケーション技術」に関する関心の有無
父親:あまり関心を示さない(46.3%)/関心を示している(30.0%)...
母親:あまり関心を示さない(48.8%)/関心を示している(26.9%)...
・両親との「コミュニケーション技術」に関する話題の有無
父親:ほとんど話さない(51.3%)/ときどき話す(37.5%)...
母親:ほとんど話さない(47.5%)/ときどき話す(38.1%)...
・相手別にみた電話の利用意識について
(上図ラインは全対象者の平均値を結んだもの。詳細は巻末資料「単純集計結果」を参考に)
※主に母親と連絡事項だけで済ます電話を手短にしている
・自分からかけるよりも、相手からかかってくることが多い、と感じている。
・両親との間では、かけるのもかかってくるのも、母親が多いと感じている。
・両親と電話で話すのが「好き」「かかってくるとうれしい」と感じるものは少ない。
・両親からの「電話に出ない」ことは少ない。
・両親とは「電話は連絡事項だけで済ま」し「目的なく電話で話すこと」は少ない。
※話者別にみた意識に差があるか検討するため一元配置の分散分析を行った。その結果、
すべての項目について1%水準で差が認められた。そこで多重比較により同質サブグルー
プを検討した結果、以下のようになっている。
1. 自分から電話をよくかけるほうだ (父親は独立/母親と友人が同一傾向)
→母と友人には電話をかけるが父には少ない
2. 相手から電話がよくかかってくる (父親は独立/母親と友人が同一傾向)
→母親と友人からは比較的かかってくるが、父からは少ない
3. 電話で話すことが好きだ (それぞれが独立)
→友人>母親>父親の順で好き
4. 電話がかかってきても出ないことがある(友人は独立/母親と父親が同一傾向)
→両親からかかってくる電話には出ることが多い
5. 電話がかかってくるとうれしい(友人は独立/母親と父親が同一傾向)
→友人からの電話はうれしく、両親からの電話はうれしいとはいえない
6. 電話は連絡事項だけですますことが多い(友人は独立/母親と父親が同一傾向)
→両親との電話は、友人よりも、連絡だけですますことが多い
7. 目的もなく電話で話すことがよくある(友人は独立/母親と父親が同一傾向)
→両親との電話で目的もなく電話で話すことはあまりない
8. 長電話を一回するより何度も電話する(父親は独立/母親と友人が同一傾向)
→何度も電話することはないが、父親の場合特にそうである
9. 電話で話すよるメールを書くほうが楽だ(友人は独立/母親と父親が同一傾向)
→※友人にはメールのほうが楽だが、両親にメールを書くのが楽ではない。
3-3. 家庭内に持ち込まれる人間関係と家庭外に延長する家族関係
[家庭内における携帯電話の利用]
状況1:家族との会話中に携帯電話の呼び出し音が鳴った
→誰であっても電話に出る(58.1%)/相手による(34.4%)
状況2:電話に出ると決めたとき、それまでの家族との会話はどうなるか
→会話を途切れさせる(78.8%)/会話を一旦終える(14.4%)
状況3:電話に出た後はどこで話すのか
→場所を変えて話をする(82.5%)/家族の前で話す(9.4%)
状況4:電話での話が終わった後はどうするのか
→会話に戻る(60.6%)/会話に戻らない(8.1)
状況5:家族との会話に戻った場合、電話の相手についての話題が出るのか
→相手について説明する(30.0%)/説明しない(66.9%)
[家庭外での家族からの携帯電話の利用]
状況1:友人との会話中に家族からの携帯電話の呼び出し音が鳴った
→会話を途切れさせ電話に出る(61.3%)/かけ直すことが多い(18.8%)
状況2:電話に出た後はどこで話すのか
→友人の前で話す(65.6%)/場所を変えて話す(28.1%)
状況3:友人との会話に戻った場合、家族についての話題が出るのか
→話題になる(35.6%)/話題は出ない(58.8%)
状況4:友人との会話に戻った場合、家族からの電話であることを説明するか
→説明する(63.8%)/説明しない(32.0%)
家族との会話中に、電話が鳴ると、相手によるが電話に出ることが多く、会話を途切れさせて、場所を変えて話す。話が終われば家族のもとに戻るが、電話の相手について話したりはしない。家族からの電話は、その場で出るなりかけ直すなりと対応し、友人の前で場所を変えずに話す。話題にはさほどならないが、家族からの電話であることは説明する。
はい いいえ
・食事中、電話に出ることがある 105(65.6%) 53(33.1%)
・食事中、メールを読むことがある 106(66.3%) 51(31.9%)
・食事中、メールを書くことがある 83(51.9%) 75(46.9%)
・団欒中、電話に出ることがある 130(81.3%) 28(17.5%)
・団欒中、メールを読むことがある 134(83.8%) 24(15.0%)
・団欒中、メールを書くことがある 121(75.6%) 37(23.1%)
3-4. 携帯電話利用による家庭内の変化
・両親と話す時間の変化 :変化していない(86.9%)
・両親と食事をする時間の変化 :変化していない(79.4%)
・一人で過ごす時間の変化 :変化していない(75.6%)
・家族とのつながりの変化 :変化していない(87.5%)
※自由回答の集計からも「家族の絆やつながり」は携帯電話利用の後にも
変化がない、あるいは、強まっている、と回答するものが多い傾向に。
※1999年の総務庁調査では「携帯電話所持後に"子供と話す機会が増えた
"」と回答した父親母親は13.8%と変化が小さいことを示している。対象
は高校2年生とその親で、サンプル数は2881人(総務庁 2000)
3-5. その他
・対象者の性差/居住形態/家族の携帯電話所持や利用頻度などによる回答の傾向
の違いはいくかの項目で統計的に見られている。主な差は利用意識に関するもの
であり、人口統計的変数間や利用行動においては目立った差は見られなかった。
また、父親と母親の間の違いなども統計的に差のみられる項目があった。
※詳細に関しては発表者が持つ資料を請求していただきたい。
4 「利用と満足」の構造変化
4-1. 方法について
・1997年にパイロット・サーベイと定性的調査により、親子間における携帯電話の
利用について、図表のような26項目を作成
・「たいへん満足している」から「まったく満足していない」までの5段階評定に
より回答を求めた。SD値は「たいへん満足=5」「まったく満足していない=1」
・26項目のそれぞれについて平均得点を算出し、さらに相関係数の最大値で共通
性の推定を行ない、バリマックス回転を用いて、主因子法により因子分析を
・1997年の調査結果と2002年の調査結果を比較
4-2. 1997年調査の「利用と満足」の構造
因 第一因子:目的的コミュニケーションの確保(話題)
子 第二因子:安心感覚の確保
の 第三因子:手軽な連絡手段の確保
名 第四因子:社会感覚の確保
称 第五因子:不安解消の手段の確保
※1997年に「(一人暮らしのものが)固定電話で両親と話す場合の利用と満足」
について検討したところ、「手軽な連絡手段の確保」という因子は析出されて
いなかった。第三因子は「携帯電話」ならではの因子であることが分かる。
※中村(中村 1996)は加入者名簿からランダムサンプリングして行った調査で、
「"緊急時の連絡手段"や"安心"と名付けられた因子が携帯電話ではアクセシビリ
ティーの確保という携帯電話特有の因子に取り込まれている」と述べている。
本調査では"緊急連絡"は第三因子に取り込まれていて同じ傾向にあるが、"安心
"は独自の因子として析出されており、親子間による利用の特徴と考えられる。
4-3. 2002年調査の「利用と満足」の構造
因 第一因子:目的的コミュニケーションの確保(話題)
子 第二因子:安心感覚の確保
の 第三因子:手軽な連絡手段の確保
名 第四因子:社会感覚の確保
称 第五因子:不安解消の手段の確保
※2002年の利用と満足の構造は、1997年とほぼ相同のものとなった。
4-4. 「利用と満足」の構造変化
SD値に着目
・二調査に共通して第三/第五因子のみ満足度の高い項目が集中
実用本位の携帯電話利用の姿/アクセスシビリティの確保にのみ満足
※手軽に連絡を取る→不安を解消する
・二調査で満足度に差が見られた項目は2項目のみで、2002年で高満足度に
「生活に必要な情報を聞くことができる」(t=-2.23、df=311、P<5%)
「相談や悩みごとを話すことができる」 (t=-2.72、df=312、P<1%)
4-5. 「利用と満足」の構造変化
因子構成項目の変化に着目
第一因子(目的的コミュニケーションの確保)について
・携帯電話で話す話題や話す内容についてあらわす因子
1997年 2002年
「まめに接することができる」 →第二因子(安心感覚)へ
「コミュニケーションの確認」 →第二因子(安心感覚)へ
「生活に必要な情報」 →第三因子(連絡手段)へ
※1997年では「接すること/つながり」が「話題」そのものとなる傾向
があったことを示している。「つながっている」だけで「何かが話され
ている」という感覚がそこにあったのであろう。しかし、2002年ではこ
うした項目は「安心感覚の確保」を構成し、「つながり」と「話す内容」
は区別されるようになっている。
※2002年では満足度が高くなったことが統計的に確認された「生活に必要
な情報を聞く」は携帯電話ならではの第三因子を構成するようになった。
電話での「話題」を表す第一因子の項目が、携帯電話ならではの「手軽
さ」を表す因子に移るにしたがって、利用の満足は高まってくるかもし
れない(仮説)。
第二因子(安心感覚の確保)について
・伝達、近接性、凝集性などで構成された因子
1997年 2002年
「楽しい会話ができる」 →第一因子(話題)へ
「元気であるか確認できる」 →第三因子(連絡手段)へ
※1997年が携帯電話の普及が広まり始めた当時と考えるなら(対象者の60
%が所有)、既存の固定電話での利用スタイルが携帯電話でも可能であ
る点が「安心」感覚を作り出していたのではないか。2002年の「安心」
は「互いの気づかいを伝える」という項目以外は、伝達内容を含むもの
がない。
※2002年にかけて第一因子から新たに第二因子を構成することになった項
目「コミュニケーションの確認/まめに接することができる」は、項目
単体で見ると電話が可能にした「道具性」による「つながり」と考える
ことができる。こうした項目が「安心感覚の確保」を構成することは、
つながりそのものに安心感覚が付与されたと考えられるだろう。この場
合の「つながり」は道具としてのつながりというより、家族としてのつ
ながりとである。
第三因子(手軽な連絡手段の確保)について
※新たに「元気であるか確認できる/生活に必要な情報」が因子を構成す
るようになった。これまで「安心」を構成していた「元気であるか確認
できる」が「手軽な連絡手段の確保」に変化したことは、中村が言うよ
う(中村 1996)に「安心と名付けられた因子がアクセスシビリティに
取り込まれる」という傾向と合致する。また、生活情報が加わるなど、
「手軽な連絡」の幅が少し広まったことが考えられる。
第四因子/第五因子
※変化なし
結論
親子関係における携帯電話の「利用と満足」の分析から、手軽な連絡で不安を解消するというメディア行動と欲求充足のあり方が明らかになった。それは1997年から2002年にかけて共通の傾向であった。
携帯できる電話という、近代的な技術によって、家族という人間関係が拡張したとしていても、家族にある、安らぎや親密さまで携帯できるメディアとしては、まだまだ利用されていないようである。
現在、家庭の絆の細さや、バラバラの家族などの問題が、しばしば携帯電話などの新しいメディアと結び付けて語られることがある。こうした一つの社会問題に対して、「利用と満足」という観点から分析を加えると・・・・現代家族の問題は、家族関係を外部に拡張させたと考えられているメディアに対する、欲求充足のあり方を通じて、とらえられているのかもしれない・・・・
参考文献
岡田直之 "マスコミ研究の視座と課題"、東京大学出版会、1992年
日吉昭彦、杉山学 "親子関係における携帯電話の「利用と満足」研究" 成城コミュニケーション学研究、No.2、2000
松田美佐、富田英典、藤本憲一、羽渕一代、岡田朋之 "移動体メディアの普及と変容"
東京大学社会情報研究所紀要、第56号、1998
宮木由貴子 "現代の小中学生の携帯電話利用 ~親子の意識・実態調査、学校調査から~" LDI
REPORT、4月号、2001
中村功 "携帯電話の「利用と満足」~その構造と状況依存性~" マス・コミュニケーション研究、No.
48、1996
岡田朋之、松田美佐編 "ケータイ学入門 ~メディア・コミュニケーションから読み解く現代社会~" 有斐閣、2002年
総務庁青年対策本部 "青少年と携帯電話等に関する調査研究報告書"、2000年
東京都生活文化局 "青少年をとりまくメディア環境調査報告書"、2002年
巻末資料「単純集計結果」
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