演劇と文化

年度 2008
科目名 演劇と文化
教員名 古川 恆一
授業概要 「二十一世紀最大の武器は、核兵器、科学兵器、細菌兵器といった類のものではなく、おそらくそれは芸術文化と情報になるはずである」とは著名な作家にして劇作家の井上ひさし氏の言ですが、ようやく我が国でも文化・芸術の大切さが認識されてきました。その現われとして、1997年に開場した新国立劇場をはじめ、公立の会館や多目的ホール、劇場といった文化施設も多く造られています。とはいえ、従来の箱物行政の名残り、文化風土の影響もあり、必ずしも運営が成功しているとは言えません。とりわけ問題なのが、建物はあるが、中身がない…ソフトに対する認識不足、人材不足です。
そこで近年、アーツマネージメント・プロデュースの存在、重要性が認識されてきています。ではいったい、アーツマネージメントとは何なのか。その必要性は?そして誰が、どう担うものなのでしょう。芸術文化の創造活動は芸術家・アーティストにまかせておけば十分という訳ではありません。あらゆる創作活動にはその中核となるアーツマネージャー・プロデューサーの存在が必要なのです。彼等こそ、芸術家・創造者を創り、芸術家・創造者の頭に宿った芸術的な閃きを作品とし、ビジネスにし、劇場などを運営するのです。
この講座では、芸能プロダクションの社員・経営者として携わった俳優を中心としてのタレントマネージメント、企画制作会社での映画やテレビのプロデュース、さらに劇場における演劇プロデュースといった、ジャンル分けのはっきりした日本の業界では珍しい多岐にわたる現場経験、そして今授業はとりわけ、我が国初の現代舞台芸術のための劇場「新国立劇場」の演劇プロデューサーとして、日本で初めてにして巨大な劇場の立ち上げから制作・運営に関わった体験、さらに2010年秋に開場予定の渋谷区立の文化ホール(中小二つの劇場を有す)の立ち上げ、運営・企画制作に携わるという授業と同時進行の実践をもとに、文化・芸術と社会・経済が結びついた実践的アーツマネージメント・プロデュースを考察します。
授業計画 13時間の中で、アーツマネージメントの必要性、内容、担い手といった問題を、日本の文化・芸能・演劇の歴史、現代日本の芸能社会構造、公的な機関との関係、とりわけ公的な文化施設の代表としての新国立劇場、劇場の立ち上げが進行中の渋谷区の文化ホールを中心に検証・考察します。アーツマネージメントの一環としての、演劇を中心に映画・テレビにおける実践的プロデューサー・マネージャー論を芸能界の実話・裏話?を交えながら考察し、最後の授業で作品の企画からキャスティングまで夢の企画書を発表してもらいます。
評価方法 最終の夢の企画書と併せ2~3回のレポート提出と出席を総合的に評価します。
教科書
参考書
メッセージ 早稲田大学の演劇博物館に「全世界は劇場なり」というラテン語が掲げられています。ギリシャ悲劇からというだけでなく、芸能・演劇は人間の根源的な営為であり、劇場は浄化・癒しの場であり、時代や社会・人間の真実を発見する場でもあります。そして世界は、人生は、まさに悲劇あり喜劇あり、虚実皮膜の間にあり、いろいろな役を演じて生きている人間の劇場です。「演劇と文化」は各国の独自の言語であるとともにまさに世界の共通言語であり、その教養・センスは国際人としての大きな糧となることでしょう。