| 年度 | 2008 |
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| 科目名 | 現代社会と法律 |
| 教員名 | 中田 達也 |
| 授業概要 | 文教大学湘南校舎の教壇に立ってから2年の月日が経った。春期は「国際法」、秋期は「現代社会と法律」で、週2回の講義のため、必然的に学生との距離は近くなる。次の期(2008年度)では、「現代社会と法律」も3期目を迎えることとなる。この授業概要では、これまでの経験を踏まえて更なる飛躍をしたい。 本講義は、予め与えられた複数の設問に対し1,500字(1,480~1,520字)の論述を「手書き」で提示して戴き、その内容をもって採点を行うものである。この字数は国家試験のレベルを想定したもので、そこに凝縮される学生の日本語の限界能力をみることが主眼である。たとえば、2007年度秋期は、次のような設問が与えられた。任意に1題を選択して論述する形式である。□「赤ちゃんポスト」の是非について、熊本病院の取り組みを解説した上で論じなさい。□「民間刑務所」の導入について、その設立経緯を踏まえて論じなさい。□「自殺対策基本法」が日本において実効性があるか、見解を提示せよ。 こうした設問を17題出題した。また、諸事情から授業への出席が十分に適わない学生のため、毎期 [救済問題]も用意する。何らかの書籍か映画の内容につき感想を書くものである。ただし、設問の趣旨から法的論述になりえないのでAAはつけない。書籍か映画の題名は、授業の何処かでお伝えする。 本講義の目的は、出席者全体の能力底上げを図ることである。ここでいう能力とは、レポートではなく、論述の力を意味する。しかし、一概に論述といっても、段階がある。その根底にあるのは、論述作法に合致する意味での日本語表現である。具体的には、①同じことをより短く表現できる場合、短い方を選択する。②常体表現(だ、である)と敬体表現(です、ます)を併記しない。③1文は、3行以内にし、的確な接続詞で文章を繋ぐ。④同じ内容を繰り返し書かない。が基本である。その上で、自説の展開、その客観化・相対化のための根拠たる学説、世の動向、海外における同問題との比較などが説得力を増してゆく。その他にも、伝えたい技術はある。 今回、2007年秋期の採点を行ってみて、私とやりとりを行った学生の答案と、そうでないそれとの差は明らかであった。そこには、1,500字という限定された条件の下で記述された日本語に対する緊張度の相違がある。履修者には、試験までの間に各自が選択した論述案にコメントが貰える権利が生ずる。2007年秋期は、112名(学内試験受験者は103名)のうち、繰り返しコメントを求めた者も併せると85名がこの権利を使用した。そうした学生の中には、この論述を通して大きく飛躍した者も出ている。 2008年は、学生の答案を熟読して得た経験を基礎にし、出席者全体の論述力を更に上げるため、新たな方法論を採用する。原則として全26回の講義のうち、一つのトピックについて「前半」をレジュメの解説(主に法的論点)に当て、「後半」を与えられた論題にどのように答えるかという論述法に当てる。そのため、選定されるトピックは11題となる。残りの5回は、授業の進め方の講義やゲストを招いての授業、そして連続回を必要とするトピックのため予備に置いておく。トピックの回については、ある特定の社会問題につきレジュメを用意し、それに基づき講義を行う。したがって、参考文献の紹介は行うが指定はしない。評価方法は、授業内で履修者に詳細に提示する。そのための冊子も作成し、履修者には目を通して貰えるよう工夫する。こうして論述のレベルを上げるため、出席は毎回論述の回にとるが、出席者にはその前回のトピックを勉強しているものとして、マイクで振ることがある。本講義を通じ、答えの出ていない社会問題について、是非とも根拠ある主張で自説を提示する能力をつけて戴きたい。 |
| 授業計画 | 第1回 教育基本法の改正について。 第2回 民事事件と刑事事件の相違について。 第3回 国歌に対する教員の行為についての事例について。 第4回 法律作成における新たな担い手といわれるNGO・NPOについて。 第5回 代理母(他者のお腹を借りる・祖母が孫を産む)問題について。 第6回 脳死体からの臓器摘出をめぐる法的問題・臓器売買をめぐる法規制の現状。 第7回 中学、高校の履修漏れ問題について。貸金規制法の成立がもたらす効果について。 第8回 自殺対策法について。内部告発法における内部告発と公益の関係について。 第9回 裁判員制度の内容と今後の展望について。法テラスの日本社会における定着の可否について。 第10回 大学非常勤講師の賃金問題について。学納金訴訟について。中国残留孤児訴訟について。 第11回 職務発明への対価をめぐる訴訟について。憲法における三権分立について。 第12回 国定教科書における他国への配慮問題について。宗教の自由は無制限であるかについて。 *残りは、試験対策及び学生からの質疑応答やゲスト・スピーカーのために残しておく。予定変更の場合は、別途トピックを設ける。 |
| 評価方法 | 昨年は、1,000字限定という難易度の高い試験であったが、学生は一生懸命に取り組んでくれた。また、答案は概ね優れたものであった。受講する人数にもよるが、授業終了後の質疑応答、講師室での質疑応答、そしてメールによるやり取りなど、皆さんの積極度に応じて、私も皆さんの実力向上に努める。評価は、あくまでも1,500字の内容如何によるが、出席点を加点事由として考慮する。誰が読んでも分かりやすく、それでいて一貫した緊張感ある文章。これを作成することで、自らの考え方が整理され、かつ相対化されることを求めたい。その度合いこそが評価そのものとなる。なお、就職活動や教職の学生のために、解説を受けた上での救済措置も用意する。 |
| 教科書 | |
| 参考書 | |
| メッセージ | 本講義は、日本の現状を考えるのに最も好個な教材となると考える。ある問題が日本と国際社会とでどのように取り組みに相違があるのか、それを知るだけでも、視野が拡げられる。すべての事柄は、他の問題と相対化して初めてその位置づけや意義が明確になる。同時に、第三者からの客観化・相対化がその問題に対する捉え方の一つの契機となる。その捉え方と現状とを比較し、そこに自分の見解を与えることで、自分の意見もまた客観化されてくる。2006年度の受講生の多くは、こうした方法論に感動してくれた。2007年度も更なる学生の飛躍を期して努力する。 |