国際協力演習Ⅰ(非営利組織マネジメント)

年度 2007
科目名 国際協力演習Ⅰ(非営利組織マネジメント)
教員名 工藤 泰志
授業概要 貧困、紛争、環境問題など一国を超えた課題や、保育、高齢者問題などの地域社会の問題、さらに国の公を担う存在としても非営利セクターの可能性や役割は大きくなっている。公を担うパブリックのゾーンの設計は日本だけではなく世界的にも大きな課題になっている。
しかし、非営利セクターに関する研究は新しく、最も進んでいると言われる米国でさえ30年ほどの歴史しかない。非営利組織研究はまさに、その発展が有望視される新分野である。
非営利組織は日本でも3万団体を越え、そこで働く人も増えているが、非営利組織が経営体として自立し、公の新しい担い手として定着するためには様々な大きな課題がある。
本講義においては、非営利組織、NGOを中心とした民間非営利組織の性質や特徴、最近のトピックスを概観するが、同時に、それが抱える本質的な課題を捉え、論理的に整理するだけではなく、その解決策を非営利セクターの制度設計や経営モデルの両面から導き出す。
こうした研究を通じて、新しい非営利組織の展開の方向と経営課題について一緒に考えたいと思う。
授業計画 本講義では、非営利組織および非営利セクターの存在意義を示す非営利セクター論やNGO論を概観し、さらに非営利組織の歴史的な考察や量的な側面を学ぶことによって、非営利セクターの可能性について概観する。次に、非営利セクターが包含する課題を明らかにし、その解決策として、非営利組織の経営論(ミッション経営、資金調達など)を中心に学ぶが、またマクロレベルの課題解決の方向性としての新しい非営利セクターに制度設計の方向を考える。この際、非営利セクターの今後の役割や可能性だけではなく、非営利組織の経営的な自立を最優先テーマに現在、多くの非営利組織が陥っている政府などの下請け的な傾向などや行政との協働のあり方なども考察する。
非営利活動を研究する際の問題意識として、「民間非営利組織が公を自立的に担う」という点を挙げたい。それを実現するには、公の領域への理解と非営利組織の経営という二つの課題に取り組む必要がある。本講義は集中講義方式で行うために、非営利組織の経営課題や制度設計などで基礎的な学習を行った後は、参加する学生に個別のNPOやNGOの事例を取り上げて報告してもらい、それがどうミッションの実現と非営利組織の経営を成り立たせているかの議論を行う中で、先の問題意識への課題解決に取り組みたい。そのため、講義参加者には課題発表を行ってもらう場合があります。
教材や参考図書はその都度、紹介するほか、講義に必要な資料は配布します。ただ、この分野の研究はまだ始まったばかりであり、本講義ではより実態の非営利セクターの経営の実例や体験も踏まえて、一緒に考える形式をなるべくとりたい。希望者にはNPOの活動に実際に参加するためのガイダンスなども行います。
評価方法 集中講義方式で授業を行うために、出席が評価の大前提となる。授業では可能な限り議論を行うが、その際の参加姿勢とレポートで評価を行う。
教科書
参考書
メッセージ 非営利セクターは、日本だけではなく、世界でも公(おおやけ)を担う大きなセクターに発展しています。私は5年前に出版社の編集長を辞め、NPOを作り、アジアでの議論交流や政府の政策評価を行っています。私が立ち上げたNPOはその後、日本に40団体前後しかない免税NPO(認定NPO法人)にまで発展しましたが、その際の試行錯誤の体験やNPO経営者の目を通して浮かび上がる実践的なNPO論や経営論を提案したいと思っています。非営利セクターが直面する課題解決やその可能性について一緒に考えることができればと思っています。