能力開発と市民教育

年度 2010
科目名 能力開発と市民教育
教員名 山脇 千賀子
授業概要 本授業は、市民教育の一環として位置づけられる。ここでいう市民教育とは、公正な地球社会を実現するためにわれわれは何をしていくべきなのかということを考えて実践していくこと、と考えてもらおう。こうしたことを開発教育とよぶ人たちもいるが、「開発」という言葉がもつ発展段階論的なニュアンスを価値中立的に位置づけるために、「市民教育」という呼び名のほうを選んだ。
「能力開発」は英語でいうところのCapacity Developmentにあたる。長期的かつ包括的視点にたって、社会開発を自立的・主体的に行っていくための能力を高めることを意味する。開発援助の現場では被援助国に対して「能力開発」のために支援するという文脈で使われることが多い。しかし、私の視点からいえば「能力開発」が必要なのは被援助国に限られない。むしろ、先進国と呼ばれる側の人々が地球上の人々と協力してより公正な社会をつくっていくために「能力開発」される必要があるだろう。
本授業の前半では、開発の意味を近代化論とのかかわりで理論的に整理する。特に内発的発展およびエンパワーメントという概念に注目したい。後半では、前半での議論に基づいて、開発援助の実例をどのように考えることができるのか、受講生とともにディスカッション形式で進める予定である(ただし、受講生数によって形式は変更になる可能性がある)。本授業をとおして、世界の様々な価値観や生活スタイルをもつ人々とどのようにつきあうのかを、他人事として考えるのではなく、受講生ひとりひとりがどのように生きていくのかという自分の課題として考えてほしい。そうした意味において、本授業は市民教育なのだ。
授業計画 イントロダクション:授業の方針・進め方の確認
開発援助とはなにか:近代化論とのかかわりで
日本の近代化を考える:柳田國男の示唆するもの
もうひとつの近代化論(1):内発的発展論
もうひとつの近代化論(2):従属論・世界システム論
構造的暴力とエンパワーメント(1):ガルトゥングの平和学
構造的暴力とエンパワーメント(2):パウロ・フレイレの教育学
開発援助の実例で考える(1)健康・食生活
開発援助の実例で考える(2)女性/男性の役割
開発援助の実例で考える(3)教育
開発援助の実例で考える(4)環境
開発援助の実例で考える(5)コミュニティ開発
開発とはなにか:市民教育とのかかわりで
まとめ(筆記試験)
評価方法 毎回授業で提出してもらうコメント・カード(40%)、授業中の発表・参加・貢献の度合い(30%)、期末の筆記試験(30%)を総合的に評価する。
教科書
参考書
メッセージ 本授業は参加型学習をめざします。受講生のひとりひとりが自分の可能性に気づくこと、他者や社会に働きかける主体となることが目標です。みなさんには真摯に対話する意欲をもって授業に臨むことを希望します。もちろん、私もそのつもりで授業に臨みます。