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-ダン・チャインあれこれ-
おめでとうございます。大正解です。
もう、お分かりですね。この伝説では、王様は32本の弦の箏を中国から持ち帰りました。そして二人の娘が仲良くけんかしないで箏を弾けるように、剣で箏を真ん中から二つに切って、16本の弦の箏を二つ作ったのです。王様は32本の中国の箏をまったく半分に切ったようですね(笑)
このお話は伝説ですから、本当かどうかは分かりません。しかし、この伝説で語られているように、ダン・チャインは16本の弦の箏で、中国の箏を改良して作られたものなのです。
世界楽器カタログ(出版社忘れました)によると、ダン・チェンは弾箏、別名をダン・タプ・ルク(弾十六)というように16弦の箏で、日本の箏より小型。中国の箏が移入され、改作されたもの......と書かれています。ダン・タプ・ルク(dda`n tha^.p lu.c)、あるいはタップ・ルック・フエン(Tha^.p Lu.c Huye^`n)ともいいます。両方とも16弦の楽器という意味です。しかし、このホームページでは、ダン・チャインを17本弦だと書いています。実は。ダン・チャインは長い間かけて、幅広い音楽表現に対応できるようにさまざまな改良がほどこされていて、16弦のほかにも17弦や19弦、22弦、23弦など、さまざまな弦の数の楽器があるのです。ちなみ私は16弦のものと17弦のものと2つ持っています。
右下の写真は私の持っているダン・チャインです。右側のダン・チャインが17弦のもので、左側は16弦のものです。(大きい写真が見たい方は写真をクリックしてみてください)一般的なダン・チャインの形/デザインは、左側の黒いダン・チャインのようなものです。写真のダン・チャインは16弦のものですが、ヴェトナムで多くみかける17弦のダン・チャインもほぼこれと同じ大きさやサイズです。
一方、右側の茶色のダン・チャインは、近年に改良されてできたデザインのもので、見てのとうり、幅が広くなっていて、長さが若干短くなっています。この楽器のデザインは、実は22弦や23弦のダン・チャインを小型化したものなようです。
ダン・チャインは横からみると、なんだか懐かしい江戸時代の日本橋のように、丸いアーチを描いたようになっています(前のページの画像も参考に!)。このアーチの形も二つのダン・チャインでは違いがあり、右側の茶色のダン・チャインのアーチはやや角度がゆるくなっています。このように二つのダン・チャインは共鳴板の大きさが違うので、音も違います。左側のダン・チャインよりも、右側のダン・チャインは奥行きのある深い音がします。
16弦や17弦ではあまり形にちがいがないのですが、19弦や23弦になってくるとずいぶんと形が異なるので、とうぜんながら音の性格もずいぶん変わってくるのです。
私がメインで使っているダン・チャインは右側の17弦のものです。この楽器は形だけでなく、箏柱(こま)が弦に当たる部分に金属片が入っているので、音の抜けもよく、またチューニングの安定度も抜群です。材質も黒いダン・チャインとは異なり、音のよさも気に入っています。螺鈿(らでん/貝で作られた絵)はありませんが、シンプルな美しさもいいです。ちなみにこれは私の師匠であるNguyen Thi Hai Phuong先生の家でオーダーメイドして作ってもらったものです。
現在のヴェトナムでは、多くの人が左側の形のダン・チャインを弾いています。音にしても形にしても、こちらのほうが一般的で、また「ダン・チャインらしさ」があるといえるかもしれません。私の友人の1人は「右側のダン・チャインは、ヴェトナム人の手の大きさや、体の大きさにあっているので、見た目も美しいし、弾きやすい」と言っていました。
ダン・チャインの大きさは縦が120センチほどあります。日本の箏とくらべると随分と小さいですね。
日本語で書かれた資料を眺めていると、「ダン・チャインは大正琴のようだ」と書かれていることがあるようですが、私は全く違うものだと思います。また、ダン・チャインはヴェトナム語では「Dan Tranh」と書きます。このせいか、日本語で書かれた資料では「ダン・トラン」「ダン・チャン」「ダン・チャイン」などと書かれています。私は「ダン・チャイン」を使っています。ちなみに「ダン・トラン」とヴェトナムで言っても誰も分からないでしょう。「ダン・チャイン」と言えば、たいてい通じると思います。
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