.....CMの現状によって世界の国々、そこで生きる多様な民族、文化を現実としてみつめることが人々にとって困難になり、その結果偏見と差別が助長され、日本の真の国際化が大きく阻害されていると感じる人は、決して、少なくないはずだ.....
FCT:Forum for Citizens' Television:市民のテレビの会
テレビが映しだす「外国」と日本の国際化
FCT第7回テレビ診断分析調査報告 No.11
1991年9月
全103ページ
FCT(Forum for Citizens' Television:市民のテレビの会)によって行われたテレビ診断分析調査(内容分析)の報告書である。 1990年6月11日-17日の一週間の、民放キー局5局とNHK2局の、午後7時から12時に放映された全番組を対象に、「外国」や「外国人」などが映し出される「外国」CM/「外国」番組を分析している。 FCTでは82年/83年/87年と同じ時間帯で異なるテーマを主眼に調査を行っており、こうした調査と基礎データは比較検討できる。広範囲にわたるデータを詳細に報告している。
経済的指標からだけではなく、日本の国際化とは何かという問い直しが求められるなかで、現実を反映するものであるメディアの分析を通じて、日本人の国際感覚を探る。国籍や人種、民族、文化が異っても人類は平等で平和で自由である、という普遍的価値観をメディアが持ち合わせているのか。テレビが日常化するなかで、民主的で、人権時代にふさわしい公共の電波のあり方が、テレビ内容に反映されているか。数量的な実態から明らかにする。
内容分析の項目は、CMについては、放送局/放送時間/CMの時間量/放送本数/業種などCMの基礎情報についてと、外国/登場人物についてなどから構成されている。番組については、放送量の基礎情報に加え、番組種目や編成、ニュースについては内容や性質などから構成されている。
これらについて、主に「外国人/外国語/外国風景」外国要素の分析を行い、「外国と外国人/外国と日本人/日本と外国人/外国/人工的背景と外国人」の5類型に分類している。
「外国人」については、「白人/アジア系/黒人系/ポリネシア系/南米混血」といった人種分類や、性別、年齢、「主人公/準主人公」といった役割の重要度、職業、役割設定を分析している。また「外国」女性に関しては、アイキャッチャーの分析を行い、上記の項目に加え、服装/服の色/髪の色などの外見や、カメラワークやカメラアングルなどの質的な分析を行っている。
「外国」に関しては、国や地域、自然や環境、登場人物との関係、外国語などが分析されている。
CMも番組もほぼ同様だが、国際ニュースの内容やドキュメンタリーのテーマなどが記述されている。CMに関してはその宣伝技法についての特徴をまとめてある。
それぞれ放送時間や放送回数、放送種類などさまざまな結果が示されているが、「外国」CM/番組については、主に放送回数で分析している。
本報告書は有料のため詳細なデータは省略するが.....外国CMは全数の1/3であり、食品CMで多くみられ、広告主でみるとトヨタ自動車/サントリー/アサヒビール/ナショナル/コカコーラ/東芝....などが多い。 上記の5類型でCMを分類した結果、「外国と外国人」がもっとも多く、ついで「外国と日本人」「日本と外国人」「人工的背景と外国人」「外国のみ」となっており、日本で登場する外国人は1割弱と少ない。 登場人物は全員で1876人で、白人が男女合わせて圧倒的に多かった。主人公も白人がもっとも多い。 男女ごとにみると、主人公では、白人は男女半々であったが、その他の登場人物は男性のほうが女性より多く登場した。一方、準主人公では、白人は男性のほうが女性よりかなり多いが、その他の登場人物では女性のほうが男性より多かった。 登場人物は全体的に若い傾向がある。だが、女性より男性のほうが年齢層の幅は広く、女性はより若く描かれている。 職業や役割設定においても、女性より男性のほうが種類の幅は広い。白人は種類の幅が広いが、非白人登場人物は「外国」風景の一部であったり、性的な対象物として限定的に描かれるような傾向がある。 アイキャッチャーの分析から、「外国」女性は、肌を露出したり強調するような服装で金髪でセクシーなどの傾向があった。カメラアングルを分析すると、そこには「鑑賞する男性」と「見られる性」といった関係があり、テレビに未成熟な性的趣向があると指摘している。 CMに描かれる外国は欧米が多く、扱われる自然題材は「空や森林」が、環境題材は「街や家庭」が多い。 宣伝手法としては、「外国」CMはイメージ的要素が強いので、CMの作品性を強調するものが多く、その結果BGMなどのAV的手法やCGなどが多く用いられている。また商品の信頼性を増すために、実際に食べたり使ったりする場面も多く、日本人と同時に登場した場合では、日本人より「外国人」のほうが、食べたり使ったりすることが多い。
番組に映しだされる「外国/外国人」は、欧米系白人系を志向したり、物珍し気なものに仕立てられたり、日本の思い込みに根ざした偏狭な表現となっており、国際化とはほど遠い。ニュースに関してはアジアのニュースが非常に少なく、経済大国である日本の優位性を強調するようなものが多く、国際的視野にたたない客観性には疑問を抱かざるをえない。
CMで絶えまなく送られるイメージは、日常化していて普遍化しやすく、調査によって明らかになった現状には数々の問題点がある。大手広告代理店には良心的な対応を期待するとともに、クリティカルにメディア内容を読み説く技能を身につけることが急務だ。
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製作/著作 日吉 昭彦/ひよし あきひこ copyright 2000 Akihiko HIYOSHI all rights reserved
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