.....テレビCMで外国や外国人を扱う際には、その国や地域に対するステレオタイプを利用しようとする傾向が強く、その意味で日本人の対外意識や外国人イメージを探るうえでもCMはきわめて有効な素材になると思われる.....
萩原 滋
日本のテレビCMにおける外国要素の役割
慶応義塾大学 新聞研究所年報
1994年 No.43
p19-38
ビデオリサーチ社の協力で得た、1993年6月1ケ月分の、東京の民放キー局5局の、8:00-24:00に放映されたテレビCMのなかの、外国人や外国など「外国要素」を、数量的に内容分析調査した結果の報告論文である。
過去の研究が示すように、日本や日本のメディアには外国語や外国人タレントが氾濫していて、テレビCMも同様の傾向がある。こうしたCMを産業論的に見れば、さまざまな異なる位置づけがあるであろうが、そこには特定の外国文化との結びつきによって商品や企業のイメージを操作しようとする意図がみられる。こうしたメディアにふれる日本人にとって、テレビは外国や外国人に関する知識やイメージ形成に大きな役割を果たすだろう。CMは欧米的になるという意見と伝統回帰の方向に走るという意見がさまざまであるが、CMの数量的分析を通じて実際の外国要素の頻度をたしかめるとともに、そこに見られるステレオタイプやイメージを探る。
内容分析の項目は、CMの長さ/放送回数などの広告特性についてと、業種/商品などメッセージ訴求内容について、登場人物についてなどから構成され、主に「外国人/外国語/外国風景」外国要素の分析を行っている。登場人物に関しては職業/人種/日本語や日本人との関わり/性別/年齢、背景については具体的な国名や地域特性、外国語に関しては文字表記/ナレーション/BGMの歌詞を詳細に分析している。
サンプルの全数は4010本。くり返されたCMは分析から除外して、種類ごとに分析している。サンプルのCM業種をみると「食品/飲料」が1010本と多く、その製品は「日本企業や国産品」が88.7%をしめ、登場人物は「生身の人間」が74.4%と実在の人間を扱うことが多かった。また、男性に比べ女性の登場人物が若く描かれており、若者/青年の男女比(32.4%:63.6%)なのに対し、中年/大人の男女比は(47.6%:26.1%)となっていた。
4010本のサンプル中、外国人は599本(15%)に、外国風景は532本(15.3%)に、画面中に書かれた外国語は2324本(57.9%....ただしほとんどが社名や商品名)、ナレーションなど音声の外国語は686本(17.1%)、外国語のBGMは363本(9.0%)含まれていた。
国産製品(16.1%が外国要素のあるCM)より外国製品(44%が外国要素のあるCM)のほうが外国イメージが強調されていた。また外国要素を多く含む広告業種は、「輸送機器(うち45.7%で外国要素)」や「衣料/身の回り品(うち45.2%で外国要素)」などである。つまり、自動車やファッションなどで外国要素が強調されている。
登場人物の人種構成をみると、白人(78.0%)、東洋/中東/中南米(9.3%)、黒人(3.2%)、人種の組み合わせのあるもの(8.3%)となっており、白人優位な結果がみられる。外国人のうち72.1%は名前の知られていないモデルや一般人で、外国人タレントよりもはるかに多い。外国人登場人物は、黒人以外では、男性より女性がより若い傾向がある。また東洋/中東/中南米の人物はさまざまな年齢の人が登場する文脈でより多く登場している。 外国人を起用したCMの80%に日本人は登場せず、日本語をほとんど話さず(84.6%)、日本人との結びつきは少ない。 外国の場面では、北米(30.1%)、ヨーロッパ(32.9%)、アジア(12.4%)、その他(24.6%)となっており、欧米偏重傾向がある。
SD法によってコーダーがイメージを記録したところ、洋風で情感に富むなどのイメージが析出された。
現在の外国要素を含むCMは、必ずしもあこがれを喚起するものだけでなく、コミカルな演出のものや、製品と外国要素が結びつくして結びついたものなど多様化している。
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製作/著作 日吉 昭彦/ひよし あきひこ copyright 2000 Akihiko HIYOSHI all rights reserved
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