.....テレビや新聞などの日本のマス・メディアは国際化という現代の課題、つまり外国(人)や異文化を正しく伝え、相互理解を促進するという要望に答えているのか.....むしろそれは一面的な情報や枠組に酔って偏見やステレオタイプを強め、真の理解をさまたげているのではないか.....
山中 正剛
メディアの外国人表現-外国人言説の読解に関する予備的研究-
コミュニケーション紀要
第9号、1996年
p161-203
外国人イメージの形成過程とマス・メディアの関わりを論じた上で、グループ・インタビュー調査による受け手のメディアイメージの現状を報告し、メディアの外国人表現の問題点と仮説を提示する論文である。
序文では、日系ブラジル人労働者のデマ問題などを例に、文化的適応過程のなかで起きるディスコミュニケーションの一面には、日本人の外国人観というステレオタイプによる認識があると指摘し、偏見やステレオタイプについて論じる重要性を述べる。
前半は、アメリカや日本での豊富な事例をもとに、イメージ形成の過程を論じている。新聞報道や放送内容によってもたれる印象が、少数派の印象につながっていることを論じる。人種や民族に対する偏見が根をおろしていたアメリカで、放送のなかの黒人表現には、隔離と偏見がみられた。地域に関するイメージと少数派に関するイメージが、逸脱のコノテーションのなか重なってゆく。こうした機能をもつテレビが、外国を理解するうえでの情報源として利用されており、受け手だけでなく、メディアの国際感覚も、イメージの形成には重要である。日本人は近代化以降、欧米に追従してきた歴史がある。メディアの情報のインバランスにはこうした背景もある。一方、イメージ改善の努力がみられないわけではない。エスニック・メディアの興隆は、国内の国際化を表す一つの指標である。しかし、現場の記者がこのような国際感覚を身につけているかどうかは別の問題である。
後半は、在住外国人を対象に、メディアの国際化や外国・外国人イメージについての、グループインタビューを行っており、その報告である。日本人の国際感覚を検証するにあたり、「不可視化され自明化された」視点ではなく、これまで主体的に表現の場に参加することを拒まれてきた外からの視点をもつため、在住外国人を中心に調査している。
調査したグループは、アジア人留学生グループ/欧米人留学生グループ/日系ブラジル人グループ、および日本人の学生グループである。(詳細な別稿・報告書はこちら→)アジア人留学生グループは、日本のメディアはアジア人に対するさまざまなステレオタイプや偏見があふれていると指摘し、貧困、非衛生、後進、未開、好色などの否定的な暗示があると発言している。 欧米人留学生グループは、日本の国際性は表面的で、外国といえばアメリカと思うなど多様性がなく、金髪や白人にコンプレックスがあり、文化を単純なファションとして見ており、国際的な番組も少ないと発言している。 日系ブラジル人グループは、異質を排除しようとする日本の傾向のなかで、異質と同質のボーダーにのっている日系ブラジル人は、さまざまな面で理解されていないと指摘している。 日本人学生グループは、建て前では国際化を論じるが、実際には新しい自体に戸惑っており、受け身で接していて、多くのイメージはマスメディアが提示したものをそのまま参照している。
まとめとして、グループインタビューの結果から、外国イメージには「暗さや犯罪などでカタルシスを得られるようなイメージ/否定的なイメージやマクロな経済的イメージから日本人本意のメガネで切り取ったようなイメージ/日常規範から逸脱したものとして笑いの対象として優越感にひたれるようなイメージ」などをあげえおり、まとめて「外国人に対して極めて閉鎖的で内向き」であると述べている。そして、これらが外国人差別の潜在意識と結びつくという。
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製作/著作 日吉 昭彦/ひよし あきひこ copyright 2000 Akihiko HIYOSHI all rights reserved
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