国際文化協力演習 II(多文化理解と援助)

年度 2009
科目名 国際文化協力演習 II(多文化理解と援助)
教員名 福田 大治
授業概要 日本が「援助大国」になって久しいが、実際の国際協力においていわゆる「文化摩擦」の及ぼす影響は無視できないものとなっており、特に日本はこの分野では研究・実践とも欧米諸国に比べ比較的遅れているともいえよう。本演習では開発理論・援助の実際と途上国世界の文化変容との関連性について書かれた文献を読破しつつ、援助の「有効性」と「限界性」についての検証を試みる。担当教員はラテンアメリカ地域における日本の国際協力の現場にコーディネーターや通訳として長期間居合わせた経験を持つが、受講生のみなさんが演習での発表で扱う地域はまったくの自由選択とする。なお、ここでは「文化」を人文科学や芸術などの分野に限定せず、政治文化なども含めた社会全体の慣習や価値認識をも意味するものとしてとらえる。
授業計画 以下の各テーマについて演習オリエンテーションを行うとともに、プレゼンテーションとディスカッションを行っていただく。
開発の概念をめぐって;「開発理論」の系譜を紹介し、批判的に議論する。「開発」とともに「発展」、「貧困」、「文化変容」などの概念についても整理してみたい。
従属論と内発的発展論;「近代化論」へのアンチテーゼとして1970年代より広まった従属論(主としてラテンアメリカ地域)と内発的発展論の概要とその今日的意義について、その限界性をふまえて議論する。
先住民と開発;ラテンアメリカの先住民問題および先住民政策(インディへニスモ)の歴史を紹介するとともに、他地域の先住民と開発をめぐる問題について調査・発表していただく。
日本における「多文化共生活動」;わが国においては外国人の定住化が一層進む中で「多文化共生」に関する諸活動がますます重要となってきている。1990年代よりニューカマーと呼ばれる南米日系人の人口が急速に増加したいくつかの県の事例をみる。
開発援助と文化変容;過去に行った議論での成果をふまえて、受講生各自の関心に応じて特定の国または地域を選択し(もしくは複数国・地域の比較研究でもOK)、開発援助と文化変容をめぐる問題についてのケーススタディーを行う。
評価方法 毎回の出席を基本とし、授業中の活動を含めた出席点を25%、期末の課題レポートを50%、適時課す小レポートを25%の割合で評価する。ただし、成績評価の基準は次のとおり。AA)形式に不備がなく内容が特に優れておりオリジナリティもうかがえる、A)形式に不備がなく内容も優れているがオリジナリティにやや欠ける、B)形式は満たしているが内容がやや不足している、C)形式・内容とも若干の難点あり、D)課題がこなせていない。
教科書
参考書
メッセージ 近い将来国際協力に従事したいと思っている方や、既にそのような経験をお持ちの方、また漠然と国際協力に関心があるので海外に行ってみたいという方など、この演習に参加する動機もさまざまであるかと思います。とかく「援助」は計量(数量)的な議論に終始されやすい分野なので、文化論をも含むより広い見識を身につけた「国際協力専門家」を目指せるよう、また、途上国世界全般にたいする「確かな眼」を持てるよう、みなさんの熱意に期待します。