国際法

年度 2009
科目名 国際法
教員名 中田 達也
授業概要 文教大学湘南校舎に縁あって3年が過ぎた。本年度は、4年目に入る。どうしたらより多くの学生に国際社会の諸問題に関心をもって貰えるかについて、国際法を位置づけて考えている。国際法とは、一般に、国際社会を規律する規範の総体である。そこでいう国際社会の意味を、ともに考えてゆきたい。そこで形成され、具体的な事象に適用される国際法の対象範囲は、およそ新聞の国際面でみることのできるほとんどの分野に及んでいる。だから、何が国際法かについては、基本を押さえる必要がある。そこでいう基本とは、次の3点に尽きる。
(1)国際法とは、どのように作られるのか(これを定立(ていりつ)という)、(2)それが、いかなる機関によって具体的な問題にどのようにあてはめられるのか(これを適用(てきよう)という)、そして、(3)国際法を適用した結果、それをどのように国が守るのか、または守らせるのかの問題(これを執行(しっこう)という)、である。この3つの柱に「国際法とは何か」という問題を常に考える思考が貫くことになる。この思考によって、国際法が学問分野として規律する範囲が異なってくる。実際、書店や図書館に行っても、国際法と題名のついた書籍は本当にたくさんある。ヤフーの本のページや、紀伊国屋等のページをクリックして国際法と入れて新しい順でみても、実に多くの書籍が出版されていることが分かるだろう。そのそれぞれが、取り扱う範囲も量も異なっている。この点、欧米の国際法のテキストには1,000ページを超えるようなものも多く存在している。
こうした中、本講義では、講義を全体として前半と後半に分ける。前半は、上記3つの国際法の柱を「国際法とは何か」という問題を考えつつ、進めてゆく国際法総論の講義である。そして、後半は、前半の総論を踏まえ、トピック制といって、1話完結の形式で、ある一つの具体的な国際法問題を取り上げ、それに解説を加えながら議論を展開してゆくものである。とりわけこれまでの国際法の講義で重視してきたのは、ある個別の問題を全体の中に位置づけて論じる「空間把握能力」の構築である。本校において私の講義を聴いた学生には、これを「全体把握能力」と名づける者もいる。これは、前半で述べる国際法の総論の中に、トピック制で取り上げる個々の問題をどのようにして位置づけてゆくかという能力である。そのためには、個々の問題も重要であるが、本当に重要なのは前半の「国際法総論」と考えている。
こうして、全体の中に個々の問題を位置づける能力を向上させるのに最も適すると考えるものが、本講義の方法論となる。それは、1,500字の論述問題を完成させることである。具体的には、後半のトピック制のうち任意の設問を一つ選定し、それについて所定の文字数の論述文を完成させることを目的とする。それが高い評価を受けるためには、その選定した問題が国際法全体の中でどのような位置づけにある問題であるのかという基本を押さえることである。これまで3年間、文教大学の学生の論述作成をつぶさに見てきたが、この点をクリアするのが最も難しいということを痛感している。そのため、よい論述答案を完成するには前半「国際法総論」の講義でどれほど集中できるかにかかっているといっても過言ではない。そこで習得する理解の上に、個々の問題の理解をのせてゆくことになるからである。これまでAAやAをとる学生には、圧倒的に講義を休まない学生(実施される添削に果敢に挑戦する学生)が多かった。そうした学生と、単に単位を取れば良いと考える学生との間における、最終的に示される論述答案のレベルには、もはや埋めようもないほどの差が生じる。それを浮き彫りにするために、本年度は出席を頻繁にとる。その出席を評価にどのように加えるかは、講義中に伝える。そして、講義の前半でも後半でも、論述の仕方を詳細に伝えてゆく。その際、これまでの提出されてきた優秀答案を明示し、何がどう優れているのかも解説して、本学に宝石のような学生が多くいることを実証したい。本講義では、これまでの学生からの要望を可能な限り反映しているし、今後の学生の意見も反映させてゆく。その意味で、私たちで心地よい緊張感ある「共有の空間」を創ってゆく。実際、これまでの軌跡は、ブログ「ひさしde勝負」に残されている。限界能力を出して向上を求める学生との新たな出逢いを願って止まない。
授業計画 教育支援課にお問い合わせ下さい。
評価方法 原則として、1,500字の論述答案を評価対象とする。加えて、出席状況をその答案に加味して最終的な評価を行う。
教科書
参考書
メッセージ 本講義には、単位に関係のない学生でも聴きに来てくれる学生もいる。講義を通じて、たくさんの学生と思い出を作ってきた。正門近くの木の机でも、カフェテリアでも、講義室でも、テラスでも、多くの質問に答えてきた。今年も、教室で「共有の空間」を創ってゆきたい。この出逢いをいつまでも大切に守ってゆきたい。