文教大学国際学部 山口博一
いまアジアには日本との関係だけから見てもいろいろな事柄が渦を巻いています。先日の瀋陽の日本総領事館での出来事はわれわれを驚かせました。その背景には昨年からの歴史教科書問題や靖国神社参拝問題、さらに戦後補償問題があります。また日本は「有事」に備えた立法化を図っており、その先には憲法改正問題が浮上するのではないかと思いますが、アジア諸国にはこれを警戒の目で見る動きがあります。
他方、インドやパキスタンの間の緊張は、核兵器が抑止力として役に立つのかという疑問や、両国が日本の政府開発援助(ODA)の大きな受け取り国であることから日本のODAは果たして役に立っているのかという疑問を持たせます。
してみると日本とアジアとの間には何か大きなずれがあるのでしょうか。日本はアジアの動きについていっていないのでしょうか。
いまはその結論は申しませんが、アジアの状況を知ることは日本自身にとっても必要で欠かせないことだと思います。ここでは、上記の事柄も考えながら、アジアについて次の7つのテーマを用意し、それに沿ってそれぞれ1ないし2本のビデオを見ながら私の見解を述べることにします。
(1) アジアと対等の目線で
(2) 多様性をかかえるアジア
(3) 国境の意味するもの
(4) 貧困と向き合って
(5) 確定した民主化の方向
(6) 平和を求めるアジア・反核のアジア
(7) 日本とアジア諸国の間の懸案
1時間半という時間の制限があるので、ビデオがいずれも細切れになるのが残念です。またどのテーマにも的確な映像があるとは限りません。場合によってはOHPで補うことがあるかもしれません。
しかし映像の力を借りながらできる限り今日のアジアの実情を語りたいと思っています。やさしくお話できるかどうかは話し手がどれだけよく理解しているかにかかるといわれます。その点でも責任は重いと自覚しています。
結局、「現代アジアの課題」、あるいは「アジアの中での日本」といったテーマによる模擬授業のようなものになるでしょう。まだアジアに旅した経験のない方々にアジアを見たいという気持ちを持っていただけるなら、目的を達したということになるかもしれません。