「 魚を食べよう! 」

 今はやりの歌の文句ではありませんが、「魚を食べると体によい」、「魚を食べると頭が良くなる」とよく言われています。その根拠は何なのでしょうか。

 一般的には、魚の脂質を構成している脂肪酸(EPAやDHA)の効果があげられます。第1日目のシンポジウム『生活習慣病を考える』でも取り上げますが、近年の研究で、タンパク質を構成しているアミノ酸にも有用なものがあることがわかってきました。カツオやマグロなどの赤身の魚、またはサバやイワシなどの青身の魚に含まれるヒスチジンというアミノ酸は、食べ過ぎを防ぎ肥満予防に効果がありそうです。

 ここでは、魚の機能性食品としての有用性をヒスチジンの働きから考察します。また、それらを豊富に含む魚について検討します。

 日本では欧米と比べると肥満者が少ないことが注目されています。この一番大きな要因は、過食の少なさであると考えられます。それでは何故過食になるのでしょうか。我々は過食の原因として、満腹中枢による食欲コントロール機構に注目しました。近年脳神経化学の分野で、赤身魚のタンパク質などに比較的多く含まれるヒスチジンから変化したと考えられるヒスタミンの抗肥満作用が注目されています。

 図1に示しましたように、脳の視床下部にあるヒスタミンニューロンがヒスタミンにより刺激されると満腹感を感じて過食を防ぐことが明らかになってきております。そこでヒスチジン摂取と摂食との関連を明らかにするために、食事調査と動物実験を行いました。その結果、タンパク質摂取量当たりのヒスチジン摂取量(タンパク質中のヒスチジン含量)が高くなるとエネルギー摂取量が低くなり、過食を防げることがわかりました1-4)。


タンパク質中のヒスチジン含量の高い食品を摂取
↓?
ヒスチジンの吸収量が増大
↓?
ヒスタミン
↓○
ヒスタミンニューロン
↓○
ヒスタミンニューロンの活性化
↓○
過食防止

図1 ヒスチジン摂取による過食防止の模式図


参考文献

1) Shigeru Nakajima, Minoru Hamada, Takahide Tsuchiya, Hiromichi Okuda : Inhibitory Effect of Niboshi on Food Intake, Fisheries Science 2000; 66, 767-797.
2) 中島滋、濱田稔、土屋隆英、奥田拓道 : 低エネルギー摂取者に観察されたヒスチジン高含有タンパク質摂取による摂食抑制, 日本栄養・食糧学会誌 2000; 53, 207-214.
3) 中島滋、田中香、濱田稔、土屋隆英、奥田拓道 : 瀬戸内海浜地区の女性におけるエネルギー摂取量とヒスチジン摂取量との相関, 肥満研究 2001; 7, 276-282.
4)中島滋、笠岡誠一、井上節子、加藤秀夫、河原裕美、土屋隆英、奥田拓道 : カフェテリ 方式を用いたヒスチジン添加飼料によるラットの摂食抑制 : 肥満研究 2002; 8, 55-60.


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