文教大学国際学部 那須幸雄
文教大学起業家クラブ
1.起業をめぐる動向
新しい旅への誘い(いざない)が、我々のモットーです。今日、学校発ベンチャービジネス(VB)が広がりつつあり、中でも大学は持てる知的資産を生かして自活する道を探らねばならない状況です。
政府の知的財産戦略会議は「知的財産戦略大綱案」を6月にとりまとめましたが、その中で大学の発明者へのインセンティブ制度導入(大学教員を特許取得の実績によって評価)があります。また、文部科学省は国立大学教員の兼業報酬を認める兼業規定を設けました。産学連携による「大学発ベンチャー」への関心が高まり、大学の保有する特許を産業化するのを手助けする企業もできています。「起業家的大学」という言葉もあり、大学の研究成果や知的蓄積を活用して、大学関係者自身の手で起業する「スピンオフ企業」に関心が集まっています。
一方、ベンチャービジネスは、何も教員によるものだけではありません。アメリカではカリフォルニア工科大学など技術水準が高く、起業しやすい環境の大学には入試希望者・起業希望者が殺到しています。先端的な工学部には技術がありますが、ベンチャー推進は工学系に限らず、文科系でも、ベンチャー希望者を手助けする企画が広まっています。
わが国でも大学などに起業家講座が設けられています(例:本学国際学部の「ベンチャービジネス論A、B」、武蔵野女子大学人間関係学部の「起業論」、聖徳大学人文学部の「女性起業論」)。学生ベンチャー「学生ネットまちづくり」(市川市)などもあります。さらに学生、一般市民の方々がビジネスの芽を見つけて起業することは、時代のすう勢に沿ったことと思います。もちろん、起業家としての特質や起業プロセスを理解せねばならない、事業のリスクがある、不況の中で苦闘せざるをえない、といった難しい障害もありますが、学生たちはこれまでにない自発的な試みに関心を覚えてきています。
2.本学の起業家クラブについて
昨年'01年4月に、学内の有志学生を集めて発足した団体(クラブ)です(代表 金井 節子)。公務員受験・資格挑戦を行うCNC(キャリア・ナビゲーション・クラブ)と並んで、湘南キャンパスの各学部(情報学部、国際学部、女子短期大学)を横断的に結んで、学生の立場から革新を行うことを目指しています。
本クラブは「湘南新産業創出コンソーシアム」(事務局:藤沢市産業振興財団)に加入しているほか、'01年は、優れた起業家を表彰する「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー(EOY)」の祭典にも出席しましたし、ベンチャー企業へのインタビューも行いました。現在、会員5名+新入会員5名の10名規模です。
サマーフォーラムでのお話は、那須(クラブ顧問)と起業家クラブが協同して行います。お隣の慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)ではこの春から、研究成果に基づいた起業を支援するための「SFCインキュベーション・ビレッジ」を発足させました。SFC発のベンチャーを育成し、学生・教職員がベンチャーを起業する際に支援する仕組みを提案する組織です。
本学の場合はまだクラブ(学生団体)でしかありませんが、これからの行き方を模索し、市民の皆様と一緒に、ベンチャーのあり方を考えたいと思います。
参考文献
1. 監査法人トーマツ 水上 亮比呂、勢志 元「この1冊で成功するベンチャー企業の 設立・運営&株式公開がわかる、できる」ビジネス社
2. 有元 美津世「アメリカ発 なるほど儲かる! ユニークビジネス ―えっ! こんなことが商売になるの?―」ダイヤモンド社
3. 片岡 勝、中本 千晶「若者よ、問題解決で起業せよ−片岡起業塾の挑戦−」明石書店
4. 中村 貞彦「輸入ビジネスはこんなに儲かる!−ヒット商品の発掘から代金回収まで―」かんき出版
5. 小林 忠嗣「起業のマネジメント―ベンチャーを大きく育てる成功方程式―」PHP研究所