「 VRMLによる立体仮想世界の体験 」

文教大学情報学部 広内研究室

 若い人達は、コンピュータ・ゲームが好きだと思います。最近のゲームは本物そっくりの景観描写を売り物にしており、そこには決闘があったり、カーレースがあったりして、その動きたるや、一昔前のギクシャクとしたものとは桁違いのなめらかさで、見る者を圧倒します。また、時空を超えて遠隔地の友達と一体感を体験できるようなコンピュータ・ゲームも登場しています。コンピュータが創り出すこのような仮想世界は、若い人達に新しい感性を吹き込みつつあると言えましょう。

 このようなゲームを応用した仮想世界を、私達は自由に創ることができないものでしょうか。例えば自分の通学する学校や大学のキャンパスを3次元グラフィックスとして創り上げて、これをインターネットのWebに公開して、遠隔地に済む友人にこの仮想キャンパスを訪問してもらうとしましょう。彼/彼女はゲーム感覚で、あなたの仮想キャンパスにアクセスし、図書館や体育館あるいは食堂などの主要な建物の中に入ってみるでしょう。彼/彼女は居ながらにして、キャンパスの写真を眺めるだけでは決してできない、キャンパス訪問という感動的な擬似体験をすることができるのです。

 このような仮想世界(バーチャル・ワールド)を自分達で作る! これを可能にするのが、最近話題のVRML(Virtual Reality Modeling Language:仮想現実モデル化言語)と呼ばれるものです。この言語を用いて仮想世界をWeb上に創り上げるのは、これからの時代の「電子工作」と言うことができると思います。  文教大学情報学部広内研究室では、数年前から学生達が卒業研究にVRMLを用いて、このような仮想世界の構築に取り組んでいます。

1.VRML言語の特徴

■インタラクティブ3次元グラフィックスを記述する言語である。  VRMLは、3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)のためのWeb指向言語です。この言語は通常のプログラミング言語とは異なり、インタラクティブなモデル記述言語の形態をしており、3次元仮想世界を簡単に構築することが出来ます。

■仮想世界の構築は“積み木細工”と同じである。  積み木細工では、基本部品が用意されていて、それを組み合わせて自動車や家の形を創り出しますが、VRMLにおいても、用意された基本形状の物体(オブジェクト)を組み合わせて、より複雑な物体を創り出していきます。

■マルチメディアに対応している。  VRMLは、マルチメディアに対応しており、仮想世界の中で音楽や写真、ビデオ映像を公開することが出来ます。

■Webサイトから世界中に公開できる。  構築した仮想世界は、ホームページに貼り付けて世界中に公開することも可能です。このホームページをWebブラウザで読み出せば、そのブラウザにプラグインされたVRMLビューアがVRMLファイルの内容を画面にCGとして表示してくれます。

■VRMLビューアはフリーソフトウェアである。  VRMLビューアは、いくつものグラフックス・メーカーからフリーソフトウェアとして無料で提供されており、従来の3次元CGソフトウェアが高価であるのとは対照的です。

■VRMLは国際規格である。  VRMLはWeb上で動かすことが出来る唯一の国際規格となっている3次元グラフィックス言語です。VRMLの正式名称は“VRML97”と呼ばれ、1998年1月に国際規格(ISO規格)、および日本工業規格(JIS規格)になっています。

2.VRMLの教育への応用

 VRMLの応用は、都市景観、建築、産業、科学、広報、娯楽など、幅広い分野が考えられますが、広内研究室では、「効果を最大限に引き出せるVRMLの応用分野は教育である」と考えています。その理由として第一は、VRMLのコーディングが簡単であるわりには、完成度の高い作品を制作することができ、生徒たちが非常に強い達成感を感じることが出来るからです。第二は、仮想世界の構築が総合力を必要とする“電子工作”と言うべきものであるからです。この工作は、中学校や高等学校で学ぶ教科の多くが関係しているので、総合力をトレーニングするのに向いているのです。

 高等学校のレベルで本格的なVRML構築を行うことを想定すると、仮想世界を設計する能力、3次元空間把握能力、それをコード化する論理能力から始まり、仮想物体の寸法出しや回転操作をするための数学における三角関数や座標変換、色は光に基づくという光学/美術理論、メロディを入れるのであればMIDI(コンピュータ・ミュージック)による音楽、完成した仮想世界をホームページで公開するときの文章作成能力、さらには外国の人に見てもらうための英作文能力などの能力が必要とされます。もちろん、コンピュータの仕組みや従来の技術工作の技能も基礎として当然必要な能力です。また、大規模な仮想世界、例えば母校の校舎を構築するといった場合には、分割・統合の制作方式を採用しなければならないので、生徒たちにとっては協調性も必要になります。

 以上のようなことから、VRMLは、現在、高等学校で話題になっている総合学習のテーマに向いていると思われます。

3.デモンストレーション

 広内研究室の学生達が3次元コンピュータ・グラフィックスをテーマにして、色々な作品を制作しています。今回は、学生達がVRMLを用いて作成した仮想世界、ならびにJava3D言語を用いて作成した裸眼立体視システムを紹介します。

(1)VRMLによる立体仮想世界

液晶シャッターメガネを装着して、100インチ大画面による立体の仮想世界を公開します。あたかもスクリーンの中に入り込んでいるような立体映像の迫力をお楽しみ下さい。

    作品内容
    ●文教大学湘南キャンパス
    ●文教大学越谷キャンパス
    ●文教大学付属中学・高校キャンパス
    ●文教大学付属小学校キャンパス
    ●神奈川県立湘南台高校キャンパス
    ●横浜みなとみらい21
    ●電脳遊園地
    ●回転木馬
    ●その他

(2)Java3Dによる裸眼立体視システム

研究室で開発した立体視ブラウザと裸眼立体視ディスプレイ装置を用いて、裸眼で立体視を体験できるシステムを公開します。メガネなしで立体映像を知覚することが出来る摩訶不思議な世界を体験してください。

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