文教大学国際学部 山脇千賀子
ラテンアメリカを語ろうとするとき音楽と踊りに触れずに済ますことは、薬味と醤油なしで刺身を食べることと似ている。素材自体の美味しさをより一層引き立てる役目を果たす、なくてはならないものなのだ。ラテンアメリカ世界において、音楽と踊りは人々の心を和ませたり興奮させたりしただけでなく、歴史や社会を動かす原動力となってきた。
アフリカ大陸から奴隷として連行された人々にとって、音楽と踊りは人間としての尊厳を保持するために不可欠であり、彼らを「人間扱い」しない人々への抵抗の礎となった。また、欧州人によって「征服」された先住民たちは、欧州の音楽や踊りを巧みに自らの文化に吸収・統合することによって独自の文化を発達させた。西洋からもちこまれた楽器や音楽が、むしろ先住民文化に「征服」されたといえるのかもしれない。
今回は、こうした歴史をふまえた音楽鑑賞にくわえて、実際に身体を動かしてサルサを踊ってもらう予定である。サルサはラテンアメリカ世界が米国という舞台で作り上げたダンスミュージック。カリブ諸国をはじめメキシコやペルーなどでパーティーには欠かせないダンスになっている。とにかく、身体でラテン世界を理解してもらいたい。