T220 情報処理の技術
現在の情報システムにおいて重要な役割を果たすコンピュータを中心とした情報処理の技術的側面を扱う。情報システムに求められる目的を達成するためにどのような情報処理技術を適用すればよいかについて、正しい判断ができる能力を養うことが中心的な課題となる。そのためにそれぞれの技術の背景、歴史的な文脈における役割をきちんと示し、その可能性と限界および人間や社会との関連に言及する。また、未来の技術に対する正しい洞察力も養う。
T221 コンピュータシステム
(1)位置づけ
情報システムの設計においては、その規模や内容に応じて適切なコンピュータシステムを選択し、それが担う機能を決めなければならない。そのために、コンピュータシステムを構成するハードウェアおよびソフトウェアの体系を理解し、その可能性と限界について評価できる能力が必要となる。技術的な知識を扱う参照学問領域の科目である。
(2)ねらい
コンピュータシステムのハードウェアおよびソフトウェアについての歴史的な発展過程を理解させる。またコンピュータシステムの機能向上が情報システムに及ぼした影響について理解させ、コンピュータシステムを評価する能力を養う。さらに、近い将来のコンピュータシステム像を描ける能力を養う。
(3)アプローチ
コンピュータシステムのハードウェアとソフトウェアの技術的側面について、歴史的な発展過程と結びつけながら説明する。また、現代の代表的な情報システムの事例を取り上げ、ハードウェアとソフトウェアの具体的な役割について考えさせる。
(4)内容
・オペレーティングシステムの登場
・プログラミング言語
・パーソナルコンピュータの構成
・第4世代言語
・マイクロプロセッサの開発
・通信技術とコンピュータネットワーク
・新しいコンピュータアーキテクチャ
などを扱う。
(5)レベル
学部および大学院
T222 データベースの管理
(1)位置づけ
情報資源を管理する立場からみたデータベース、情報システムにおけるデータサーバとデータベース、の2つの視点からデータベースの管理における諸問題を扱う。「ソフトウェア開発」や「情報資源管理」と関連する科目である。
(2)ねらい
情報システムにおけるデータベース管理の位置づけや役割、およびデータベースの管理方法について理解させる。
(3)アプローチ
できる限り具体的な形で、実際の情報システムにおけるデータベース管理のケースを紹介する。データベース管理システムを用いた実習を行うことが望ましい。
(4)内容
・情報システムにおけるデータベースシステムの役割
・要求分析とデータモデル
・論理モデルと物理モデル
・ファイル構成
・クライアント/サーバモデル
・データベース管理システムによる実習
・データベース管理システムの比較
・データベースのセキュリティ
・マルチメディアデータベース
・オブジェクト指向データベース
などを扱う。
(5)レベル
学部または大学院
T223 通信システムとコンピュータネットワーク
(1)位置づけ
情報システムにおいて、情報の伝達の地理的、時間的制約を克服できる通信システムとコンピュータネットワークの機能について扱い、それが情報システムの開発において重要な役割を果たすことを認識できるようにする。技術的な参照学問領域の科目である。
(2)ねらい
通信システムおよびコンピュータネットワークを実現している基本的な技術について理解させる。通信システムやコンピュータネットワークによる情報伝達機能が情報システムにおいてどのような役割を果たしているかを理解させる。
(3)アプローチ
ネットワークの基本的な機能を理解するために、ネットワークを用いたメッセージ交換やグループワークなどを実習させる。
(4)内容
・通信システムの発展と社会の変化
・通信技術の基礎
・コンピュータネットワークの基礎
・ネットワークを利用したグループワーク
・情報システムにおける通信システムとコンピュータネットワークの事例
・これからのネットワーク社会の問題点
などを扱う。
(5)レベル
学部および大学院
T224 プログラミング言語論
(1)位置づけ
情報システムの開発に用いるプログラミング言語について、それらをマクロにとらえ、プログラミングパラダイムのレベルで理解する。これによって、実際のシステム開発で使う言語やツールを決定するのに役立てる。「ソフトウェア開発」の技術的な基礎となる参照学問領域の科目である。
(2)ねらい
各種プログラミングパラダイムを理解し、それらの代表的な言語を知ることによって、システム開発で使うべき言語とツールを選べるようにする。
(3)アプローチ
プログラミングパラダイムごとに代表的な言語、ツールを使って実習し、そのあと、それぞれの利害得失について討論する。
(4)内容
・プログラミング言語の変遷
・プログラミングパラダイムと言語
・代表的な言語による実習
・各パラダイムの特徴
・情報システム開発におけるプログラミングパラダイムとツール
などを扱う。
(5)レベル
学部中心、一部大学院
T225 ソフトウェア開発
(1)位置づけ
ソフトウェア開発は情報システム開発の一要素である。情報システム開発におけるソフトウェアの開発は、「自ら開発する」、「開発してもらう」、「パッケージを活用する」など、それぞれの立場によって考慮すべき点が異なることに焦点をあてる。システム開発工程に関する「情報システムの企画」および「情報システムの開発」と関連深い科目である。
(2)ねらい
ソフトウェア開発・管理・運用の各ライフサイクルでの諸問題とその解決方法について理解させる。
(3)アプローチ
ソフトウェアの設計、コーディング、テスト、ドキュメンテーションの実習を通じてソフトウェア工学の基礎を身につけさせる。チーム作業の経験もさせる。
(4)内容
・情報システム開発におけるソフトウェア開発
・仕様書の書き方と読み方
・ソフトウェア開発のモデルと方法論
・ソフトウェアの詳細設計
・プログラミング支援環境
・開発ツール
・コーディングとデバッギング
・ドキュメンテーション
・バージョン管理
・保守運用
などを扱う。
プログラミング言語の比較については数種類の言語での実習を伴う。
(5)レベル
学部および大学院
T226 データ処理法
(1)位置づけ
情報処理技術の発展の中で、データ処理に関する実践的成果が集成されてきている。情報システムのソフトウェアの開発にあたって、これらの定石を理解しておく必要がある。技術的側面に関する参照学問領域の科目であり、「ソフトウェア開発」と関連深い。
(2)ねらい
情報システムの信頼性と効率を高めるために、実践との関連で考案、蓄積されてきたデータ処理の技術を理解させる。
(3)アプローチ
経験的実践的な技術と理論の紹介が中心となるが、理解を十分にするために可能な限り実習を行う。
(4)内容
・データ処理の変遷
・データ処理手法の可能性と限界
・データ処理における効率と信頼性
・各種アルゴリズムとデータ構造
・各種パッケージとその利用
・コンピュータアーキテクチャとデータ処理法
・プログラミングパラダイムとデータ処理法
などについて扱う。
(5)レベル
学部および大学院
T227 マルチメディア情報処理
(1)位置づけ
情報システムの中では、これまでの数値と文字を中心とした情報を扱ってきた。しかし、情報処理技術の発展によって、音や映像を対象とすることが可能となった。そこでこれからの情報システムを考える上で不可欠なマルチメディアの情報処理技術を扱う。技術的な参照学問領域の科目である。
(2)ねらい
人間の活動におけるマルチメディア情報の持つ役割を理解させ、マルチメディア情報を統合的に扱う諸技術を理解させる。
(3)アプローチ
マルチメディア情報処理の具体例を示し、いくつかのツールを紹介する。マルチメディアのツールを使った講義や実習を行うと効果的であろう。
(4)内容
・マルチメディア情報処理の特徴
・人間の活動におけるマルチメディア
・映像の役割と取り扱い
・マルチメディア情報の蓄積
・マルチメディア情報の伝達
・いろいろなメディアの統合
・マルチメディア情報の処理技術
・マルチメディア関連ツールの紹介
・マルチメディア関連ツールを使った実習
などを扱う。
(5)レベル
学部が中心、一部大学院
T228 知識情報処理
(1)位置づけ
人工知能研究の進展にともない、情報システムに適用可能な知識情報処理技術も確立されてきた。この意味から、知識情報処理の概要を学習し、情報システムにおけるこの技術の役割を考える。参照学問領域の専門科目として扱う。
(2)ねらい
情報システムにおける知識情報処理の活用を狙い、その基礎となる理論と技術の概要を理解させる。また、この技術が万能でないことも理解させる。
(3)アプローチ
知識情報処理技術の特徴をあげながら、現実の情報システムで使われている知識情報処理を紹介する。さらに具体的な理論と技術を示し、簡単なエキスパートシステムを作成する。人工知能研究の可能性を討論するのもよい。
(4)内容
・情報システムにおける知的情報処理
・探索と推論
・知識表現
・エキスパートシステム(作成実習も含む)
・知識獲得
・ニューロシステム
・ファジー理論
・他の情報処理技術との比較
・知識情報処理の応用
・人工知能への期待と批判
・知識情報処理の可能性と限界
などについて扱う。
(5)レベル
学部中心、一部大学院
T229 システム構成・統合技術
(1)位置づけ
情報システムを、人間、コンピュータのハードウェアとソフトウェア、データベース、ネットワークなどを統合したシステムとして捉える。そして、これらを一定の目標のもとにシステムとしてまとめる場合の諸技術とそれらの社会的影響などを扱う。情報システム開発の技術的な基礎となる専門科目である。
(2)ねらい
統合的にシステムをとらえることの意義を理解させ、そこで必要な知識と技術を習得させる。複雑な状況と環境の変化に対応できる能力をもつ技術者を育成する。
(3)アプローチ
統合的システムの意義を技術の進歩と歴史的必然性の両面から説明する。事例研究や討論、および報告書の作成を取り入れることが望ましい。実務経験者の特別講義もよい。
(4)内容
・システム統合化への歴史的変遷
・システム統合化への意義
・目的達成のための統合化技術
・信頼性の向上技術
・安全性の確保
・システム監査と運用への配慮
・システムインテグレーション技術の特徴
・問題解決におけるシステムインテグレーション
(5)レベル
大学院中心、一部学部