H210 人間組織体

 

 意思決定や情報伝達などの観点から人間が構成する組織体における構造や機能を扱う。組織体は人間の定めた何らかの存在目的を達成するために形成されたものである。その目的を効果的に達成するために、組織構造を定め、管理の制度や仕組みを設けている。情報は、それらを有機的に機能させる重要な役割を担っている。このカテゴリは、情報システムの設計者に情報システムが組み込まれている組織体について理解させるとともに、組織体の活動における情報の持つ役割についての認識を深めさせるものである。

なお、このカテゴリの教科内容は、学部レベルでは広く一般的な理解を与える程度、大学院レベルでは、より深くまた将来の動向を見通せるような能力の開発に重点を置くことになる。

 

H211 組織体

(1)位置づけ

 組織体とはどういうものか、組織の目的や目標がどのように形成されるか、またそれらが組織体の諸活動とどのように関わっているかなどについて扱う。さらに、情報システムの企画・開発にあたって欠かすことのできない情報が組織体にどのように関わっているかの理解を深める。参照学問領域に属する専門科目である。

(2)ねらい

 組織体とは何かについて理解させ、組織体に関する様々な観点を認識させる。さらに、組織体の内外における情報条件が深く関わりを持つことおよび情報の役割について理解させる。

(3)アプローチ

 組織体を対象とした理論の流れに沿って、組織体の目的や目標の形成、成果の測定や評価、構成員の行動仮説などについて、社会的状況や背景を含めて説明する。とりわけ、情報環境・情報条件との関係を明らかにし、今後の展開に対する洞察力を育てるように工夫することが必要である。

(4)内容

 ・組織理論の歴史的流れ

 ・組織体の目的と個人の目的

 ・組織を動かす仕組み(組織の定義と構造)

 ・責任と権限(組織と集団の違い、目標間の葛藤、最適化と満足化、参加と合意形  成、役割意識と自発性)

 ・組織の形態

 ・活動の効率性と成果の有効性、活動と成果の測定と評価、評価の一般的構造

 ・組織体の改革・変革のプロセス(変換過程としての組織)

 ・組織体の管理

などを扱う。

(5)レベル

 学部レベルでは関連概念が理解ができるように説明する。大学院レベルでは、組織体の動的な側面および変革の過程に焦点をあて、情報システムとの関わりを考えさせる。

 

H212 組織体における意思決定

(1)位置づけ

 組織体の活動は、全て意思決定に基づいて行われる。意思決定にあたって、情報と時間が充分に与えられている場合もあれば、そうでない場合もある。情報システムは、意思決定者を支援するための存在である。組織体の中で行われる意思決定と情報および情報システムとの関係について扱う専門科目である。

(2)ねらい

 組織体の中で行われる意思決定とそのプロセスについて、種々の解析的モデルと記述的モデルを使って理解させ、関連する重要な概念を習得させる。また、意思決定に伴う情報活動について理解を与えるとともに、決定の種類に応じて必要とされる情報と支援の内容について理解を深めさせる。

(3)アプローチ

 個人が行う私的な意志決定と組織の中で与えられた責任権限に基づく組織活動として行う意思決定との違いに焦点をあてて説明する。各種の事例的状況を用いて説明を加えるとともにケース分析やロールプレイングなどを利用するのもよい。

(4)内容

 ・意思決定とは何か 

 ・意思決定の基本概念

 ・意思決定のプロセス

 ・意思決定と情報条件

 ・決定の合理性(目的、手段)

 ・決め方の問題

 ・意思決定の解析的モデル

 ・意思決定過程の記述的モデル

 ・集団の意志決定過程(複数の分析視点)

 ・個人の決定と組織体の決定

 ・組織体の合理性

 ・組織における合意形成

 ・組織の意志決定への環境の影響(組織の環境依存モデル:preffer

(5)レベル

 学部レベルでは関連概念を一般的に教える。大学院レベルでは、情報条件の変化が意思決定の仕方や責任権限のあり方、組織形態そのものへ与えるインパクトなどに焦点を当て、より深く情報と意思決定との関係を考えさせる。

 

H213 組織設計論

(1)位置づけ

 情報システム学のなかで最も困難な理論がこの領域にある。組織の研究は事後的に歴史検証的に行うものばかりで最適組織の有り方を追求するための組織設計方法論の解明はいまだ不充分である。しかし情報システム開発には必ず組織の改変を伴う。情報化社会の進展のなか、情報を戦略的に活用できる組織の存り方やその階層の平板化をもとめて組織設計が企業の課題になっている。これらの組織の実体に関連する諸問題を扱う専門科目である。参照学問領域に位置づけられる。

(2)ねらい

 経営における情報システムと組織との不可分性を習得させ、組織設計の重要性とその方法論を理解させる。

(3)アプローチ

 組織体として企業、学校、官庁、自治体などを取り上げ、組織の実体を扱う。とくに情報化の波がどのように組織改革にインパクトを与えてきたかに焦点をあてる。さらに情報システム開発の局面に於ける組織分析、設計、開発、維持という組織のライフサイクル管理の重要性を考えさせる。

(4)内容

 ・組織構造の設計:組織階層、span of control

        権限の発生、権限構造

        管理者の役割、管理機能、管理階層

組織への情報システムの適合、技術の選択

組織設計の手法

 ・組織の環境適応:オープンシステムとしての組織

組織の情報源

 ・組織の情報処理モデル:組織論(経営学)

組織サイバネティックス論(Beer

        情報処理パラダイム(Galbratith

 ・情報システム開発と組織開発の同期化方法論

 ・機能と分業

 ・情報伝達の系統としての組織

 ・情報伝達の中点としての職位

などを扱う。

(5)レベル

 大学院