C240 情報システムの開発

 

 情報システムの企画が定まると、その企画に基づいて情報システムの開発が行われる。ここでは、情報システム開発の主な工程である開発計画、分析、設計、実現と、これらに関連したプロジェクト管理がどのように行われるかを扱う。大学院を対象とする分野であるが、学部レベルで開講する場合は情報システムの開発活動に関する知識を与え、設計の基礎的な技術を理解させる点に重点をおく。

 

C241 情報システムの開発活動

(1)位置づけ

 情報システム開発の専門的基礎となる科目である。新しいシステムの着想、または既存システムの不具合の指摘から始めて、新しいシステムまたは改訂されたシステムが稼働するようになるまでの仕事について扱う。あとに続く設計方法、開発技術などの科目の出発点となる。

(2)ねらい

 情報システムが企画されてから稼働するまでの開発過程にどのような仕事があるかを理解せせる。

(3)アプローチ

 どんな方法論や技術が利用できるのかとは無関係に、いろいろな仕事の側面を述べ、組織体の観点からみた課題(システムの目的、期待効果、機械と人間との役割分担など)、情報技術の観点からみた課題(適用する技術の選択、機械化部分の実現など)、プロジェクトの観点からみた課題(進捗の管理、予算と実行管理など)がどのように達成されていくかに焦点をあてる。

(4)内容

 以下の側面について、情報システム開発の仕事がどのように組織化され、どのような順序で行われるかを述べる。

・情報システムの開発プロセス(計画、分析、設計、実現、構築、運用テスト、文  書化、性能評価など)

・情報システム開発の体制(一括委託、プロジェクト・チーム、プロジェクト会議、 ウォークスルー、利用者の参画、スタッフの参画の範囲、スタッフ間の観点の相  違の調整など)

・情報システム開発プロジェクトの計画と管理(外注管理、進捗管理、予算管理、  開発サイクル、開発期間、保守、修正、運用など)

(5)レベル

 主として大学院

 

C242 情報システムの開発計画

(1)位置づけ

 政策的な「情報システムの計画」を受けて、実際に情報システムを開発・実現するための技術的な開発計画について扱う。企画された情報システムをどのように作り、いかに運用するかまで考えて計画をたてることの重要性についても扱う。

(2)ねらい

 情報システムの実現方法に対する明確なポリシーの策定がいかに重要であるか、また、組織体のどのグループが、どのように情報システムの開発に関わり合うかについて理解させる。

(3)アプローチ

 大規模情報システムを開発する場合には開発チームの組織化がますます複雑・困難になることを理解させるために、情報システムの開発プロセスにおける技術的な問題点と開発ポリシーを分けて述べる。

(4)内容

・情報システム開発計画(企画を実現するための戦略、開発計画へのアプローチ、開 発プロセスと階層、実現方法、開発上の他の問題点など)

・情報システム開発ポリシー(情報システム開発部門の戦略、開発チームの構成、参

 画レベルと目的、所属する組織体を異にするスタッフの役割、開発スケジュール、 訓練などに関するポリシー)

・社会環境(プロジェクトの役割と限界、組織を越えたデータの流れ、ユーザニーズ など)

を扱う。

(5)レベル

 大学院

 

C243 情報システムの設計方法

(1)位置づけ

 「情報システムの開発活動」で開発における仕事の大まかな流れを理解した上で、システム開発の仕事をどの様に実行するかを理解するために、広く提案され、多く利用されている設計方法論について学ぶ。情報システム開発のコアとなる重要な科目である。

(2)ねらい

 利用できる既存の方法論の種類と、方法論の一般的特性を認識させる。さらに一つまたはそれ以上の方法論を理解させ、実際に使用できるようにする。

(3)アプローチ

 初めに情報システムの設計方法の概要を説明し、そのあとで、一つの方法論を採用してさら深く解説する。その際、個々の学生または小グループに分けて、特定の方法論について実習させ、その結果を全学生に報告させるなどの方法をとることが望ましい。一つの方法論について詳しく述べるか、いくつかの方法論をグループごとに学習させ発表させるのもよい。

(4)内容

・情報システムの設計方法論の種類と比較(方法論の特徴と比較)

・特定の方法論に関する具体的な設計方法

・方法論の全体系・展望(方法論の外観と概念の進化、概念的な根拠による方法論の 分類)

などを扱う。

(5)レベル

 大学院

 

C244 情報システムの開発技術

(1)位置づけ

 「情報システムの設計方法」に基づいて情報システムを開発するために、広く活用される有用な技法(道具と技術)や、特定の方法論を支援するために開発されている技法について学ぶ科目である。

(2)ねらい

 情報システム開発に広く利用されている道具と技術を理解させ、そのうちのいくつかについて応用できるようにさせる。

(3)アプローチ

 提示や解説をする講義と、技法を実際に利用する演習とを行う。一連の技法を用いて問題を解く練習をさせるとともに、異なった状況、または異なった技法との適合性を評価させる。

(4)内容

 情報システムの開発において利用する個別技法を扱う。

たとえば、

・モデリングの道具(問題の状況、費用対効果、投資分析、仕事満足度、データな  どのモデリングで使用する技術など)

・調査と診断の技術(面接、調査、観察、文書研究、分担、プロトコル分析、分散  分析、デルファイ法、ブレーンストーミング、プロトタイピングなどの各技術)

・推定技術(性能評価、プロジェクト予算、要求予測など)

・表現方法と記法(方法のタイプ、決定分析のための表現、要求分析のための表現、 プロジェクト管理のための記法、システムとプログラム設計のための記法と技術、 使用書のための記法、など)。

 ただし、T22O管理科学など、他の科目で教える技法については、簡単な論述にとどめる。

(5)レベル

 主として大学院

 

C245 開発組織と開発プロジェクト管理

(1)位置づけ

 情報システム開発において重要な開発組織と、組織やプロジェクトの管理について扱う。これは、技術的な側面を扱う開発の諸科目と併せて扱わなければならない重要なコア科目である。

(2)ねらい

 システム開発計画者から分析者、設計者、プログラマやコーダに至るまで多くの関係者が携わる情報システムの開発には特別の組織が必要であり、この開発プロジェクトを管理する組織が必要であることを理解させる。また、それらの組織の構成と、いろいろな人が集まることの難しさについても理解させる。さらに、情報システム開発のために、運用との関わりを正しく認識させる。

(3)アプローチ

 開発方法論に基づいた情報システム開発の各フェーズとその作業内容を理解させた上で、プロジェクトチームを構成し、実際にシステム開発の手順に基づいて作業させる。

(4)内容

・情報システム開発に関わる組織の構造(開発メンバーの構成)、大きさ、メンバー の役割分担

・開発のための組織化の問題(開発メンバーは、所属する組織体、技術背景、実務知 識などが異なる)

・開発活動における組織間のコミュニケーション(開発チーム内の対話、関係グルー プ間の連絡、良い文書化の重要性など)

・プロジェクトの管理(プロジェクト管理専任スタッフ)

・開発に関する管理の戦略と手順

・標準と管理

・スケジューリングと予測

・実現のための管理

・管理の限界(ポリシーの重要性、開発に関係する組織の諸問題)

 とくに、目に見えない対象であるため、徹底した計量管理による進捗管理が必要であることや、開発の遅れや実情の把握の難しさに触れる。

(5)レベル

 大学院