C120 情報システムの概念的基礎

 

 情報システムの企画・開発・運用・利用に関わるには、情報システムの概念や特性をよく理解しなければならない。ここではそのような理解をえるための基本となる、知識・情報・デ−タ、システム、デザインを扱う。この科目群は情報システムを学ぶための第一歩であるので、学部課程で開講することが望ましい。3科目を一つにまとめることも考えられる。

 

C121 データと情報

(1)位置づけ

 知識や情報およびデ−タという概念の理解は、情報システムの分析・設計・運用・評価・活用に不可欠である。そこで、その重要さを十分意識し、デ−タ、情報、知識それぞれが情報システムとどのように関わるかを明らかにする必要がある。本科目は、後述する「情報と知識」、「システムと情報」、「デザイン」とともに、情報システムの概念的基礎を与える科目であり、情報システムに関する全ての専門科目の基礎となる。

(2)ねらい

 知識、情報、デ−タが人間の行動、組織体の活動と不可分であることを認識させるとともに、コンピュ−タ・システム、デ−タ処理への関心が強すぎることによって情報そのものに対する理解がおろそかになり、情報システムの存在理由の把握があいまいにならないようにする。また、情報への取り組みは企業に限らず、個人生活や社会活動においてもなされることを理解させる。さらに、企業においても、業種(例:ビジネスマン、コンピュ−タ技術者、電子工学者)や立場(トップマネ−ジメント、システムエンジニア、営業担当)によって情報への取り組み方が異なることを理解させる。

(3)アプロ−チ

 利用者と情報システムの対話に注目しながら、入力、出力および処理に関係するデ−タ、情報、知識の基本的な差異、これら相互の関係、およびデ−タ、情報、知識を処理できるようになった歴史的経緯に重点をおいて説明する。

(4)内容

 デ−タの送信と受信、情報の伝達と獲得、知識の確率と活用といった用語法や捉え方の違い、それらの内容の分りやすさ、表しやすさ、影響力などとの関連を明らかにする(たとえば、記号論や言語理論、述語論理などの応用)。また、認知科学における見方を参照して、「情報システムにおけるデータ、情報、知識」や「計算機科学におけるデータ、情報、知識」について認識させる。

 さらに、表現メディア(テキスト、音、画像・映像、マルチメディア)、記憶メディア、伝達メディア、情報やデ−タの信頼性・価値・流通、情報理論、知識表現、知識の応用(人工知能、知識ベ−ス、知識工学・処理、エキスパ−ト・システム)なども取り上げる。

(5)レベル

 学部

 

C122 情報と知識

(1)位置づけ

 情報は既存の知識によって理解され、一方では、情報は新しい知識を作り出している。知識についての論議は哲学や認識論から知識工学までの様々な分野でなされていることを示すと共に「人間の情報処理」や「知識情報処理」と結びつける。知識は、情報とともに情報システムの理解と構築の上での基礎的概念であることを示す。

(2)ねらい

 情報と知識の関係から始まり、情報システムと知識について、対象を定量的に扱う方法に対して、対象を理解する人間の側を定性的に扱う認知的な方法の特色を理解させる。

(3)アプローチ

 フローとしての情報に対してストックである知識、また情報を理解するために使われる知識、情報によって構造が変わる知識といった情報との関わりで知識の様々な側面を取り上げる一方、知識そのものに関して多様なアプローチがあることを示す。様々な分野における知識の概念の違いを強調するだけでなく、むしろ共通な点を見出すことをめざす。

(4)内容

 情報と知識、理解と知識、言語と知識、教育と知識、記録と知識、客観的知識(ポパー)、暗黙知(ポラニー)などを扱う。さらに、担当者の関心の範囲で、哲学、言語学、認知科学、認知心理学、人工知能、知識工学などの諸分野における知識についての議論を紹介する。

(5)レベル

 学部

 

C123 システムと情報

(1)位置づけ

 情報システムを理解するための前提として、広義のシステムの概念や特徴を正しく理解する基礎科目である。広義システムの中でデータや情報がどのように流れ、処理、利用されるかを理解することによって、情報システムの概念的基礎を与え、情報システムに関する全ての専門科目の基礎となる。

(2)ねらい

 情報システムの構築・運用・利用を理解するために、広義システムとは何か、情報とは何か、どのような特徴があるかなど、広義システムと情報に関する基本的な理論・考え方を情報・デ−タの処理の面から理解させる。また、広義のシステムと情報がどのようにかかわるか(例:オ−プンシステム、クロ−ズシステム)についても理解させる。

(3)アプロ−チ

 システムを単なる道具としてみるのではなく、構成要素間のつながりを重視して、共通の目的を達成するための必要不可欠な実体とみなし、情報および組織体との関連においてシステムの概念が理解しやすい理論・考え方に焦点をあてて説明する。

(4)内容

・システムの捉え方

・システムの種類(例:オ−プンシステムとクロ−ズシステム、フォ−マルシス テムとインフォ−マルシステムなど)

・システムと関連する各種の概念(対話処理、入力、出力、フイ−ドバック、ネ ットワーク、サブシステムなど)

・基本的なシステム理論

・システムの中での情報の捉え方(情報システムと情報ベース、データシステム とデータベース、知識システムと知識ベース、あるいはこれらの違い)

などについて扱う。

(5)レベル

 学部

 

C124 デザイン

(1)位置づけ

 「データと情報」、「情報と知識」、「システムと情報」とともに情報システムの概念的基礎を与える科目であり、情報システムに関する全ての専門科目の基礎となる。情報システムの構築において、使うことを重視した計画・設計が必要である。このための基礎となるデザインの意味と概念、デザインにあたっての考え方や関係する知識を扱う。

(2)ねらい

 さまざまな人工物の創作にあたってまずデザインがあるが、各分野でのデザイン(広い意味での設計)に関する基本的な考え方を知り、情報システム設計におけるデザインについての関心を深めることを目標とする。

(3)アプロ−チ

 新しい価値を創造するためのイメ−ジ(たとえば、デザインの効果・影響、周りとの調和)を描く手段という意味でデザインを扱う。したがって、純工学的な観点のみではなく、社会的需要・道義や社会的認知の問題など社会科学・人文科学的観点をも重視して、システムの計画・設計と結びつくデザインの様々な問題について説明する。

(4)内容

・デザインと設計との違いは何か(what to make how to make

・デザインの種類

・デザインの道具

・デザインにまつわる問題・考慮事項

・デザインに与える社会的・心理学的影響

・情報システムとデータシステムにおけるデザインの共通点と相違点は何か

・設計過程の種々なモデル

・設計活動の実際

・デザイン教育と設計教育

などを取り上げる。

(5)レベル

 学部