脂質異常症って何?

脂質異常症とは

 脂質異常症とは、血液中の脂質(血清脂質)が異常に増えすぎた、または減りすぎた状態のことです。血清脂質とは、血液に溶けているコレステロールや中性脂肪などの脂肪分のこと。これらの異常が心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患をひきおこします。
 脂質の異常だと診断されるのは、①悪玉コレステロールが多すぎる場合②善玉コレステロールが少なすぎる場合③中性脂肪(トリグリセライド)が多すぎる場合の三つです。

脂質異常症の診断基準

あなたの血清脂質の検査値がこのいずれかだと脂質異常症です。
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)----------140mg/dl以上
善玉コレステロール(HDLコレステロール)----------40mg/dl未満
中性脂肪(トリグリセライド)----------------------150mg/dl以上
※空腹時採血

 増えすぎた悪玉コレステロールは、動脈の血管の内側にこぶ(プラーク)を作って血流を悪くして、ある日突然、血液が詰まり、最悪の場合には血管を破裂させます。血管の状態を悪化させるのは、「高血圧」、「タバコ」、「糖尿病」、「男性45歳以上または女性55歳以上」、「心臓病を起こした家族がいる」、「善玉コレステロールが少ない」----この6つの条件(危険因子)にあてはまる数が多いほど、心筋梗塞などをおこす危険が高まります。

※「日本動脈硬化学会」HPより引用・一部改変

医師からのコメント ~脂質異常に気づいたとき~

 健診で何気なくマークがついていたことを、ふとした身近な人のトラブルで急に気になることがあります。特に頻度も高く無症状の脂質異常はその典型ともいえます。確かにコレステロールや中性脂肪が異常値であっても日常生活に差し障りがあることはほとんどありません。しかし、現代の医学では危険を少なくすることは可能なのです。
 動脈硬化症は全身の血管に起こりますが、特に脳や心臓の栄養血管では重大な結果をもたらします。日常生活や生命までも奪われる可能性があるのです。その危険度は一つではなく、血圧、血糖、内臓肥満や喫煙などのメタボリック症候群に代表される複合的要因なのです。したがってその個人の状態によって基準値も異なります。さらに過去の健康状態や肉親の血管病の有無によっても危険度は異なります。これらの要因を考慮して医療機関では診療を行いますが、まずは現状の把握であり主要な欠陥の動脈硬化症を検査するのです。
 医療には家族歴や体型、生活習慣などから高危険群に対して異常値が出ることを予防する一次、異常な検査値から病気の合併症を予防する二次、発生した合併症の治療である三次医療がありますが、すべて共通することは生活習慣の是正です。日本人は少なくとも第二次世界大戦以降脂質の摂取量が増加し、運動不足になっています。その結果脂質の数値は確実に動脈硬化症の悪化に向かっています。また、臨床検査の進歩により、詳細な検査たとえば脂肪酸分画を調べると青魚の良質な脂肪の血中比率もわかりますし、悪玉コレステロールの中でもとくに問題となる変性LDLコレステロール濃度もわかります。すべての人に必ずしも必要ではありませんが、危険を回避するため異常値が気になったら診療を受けることも身を守る手段です。

※茅ヶ崎市立病院 診療部長 佐藤忍先生